イイコでしょ?











「まだ必要ねぇだろ。」





そう軽く言われ、なぜだか心の奥がギシリと軋んだ。




ショック?受けてるの?私。




必要ないって言われて。




今は必要ないってだけで…と自分の中で言い訳のように繰り返して、気持ちが声に表れないよう努める。





ですよね!って、ははって無理やり笑ったりして。




どうせ見えてないから引きつった顔はそのままにして。





早く話題を変えなきゃ、変な空気になりそう…




そこで苦し紛れに出た話題に自分でも呆れる。





「井上さんは…」





「あ?由香なら俺より先にコッチ来てたから、もうそっち帰ってんじゃねぇの?明日は会社出てくると思うけど。」





「あ……そう、ですか。はい、分かりました。」





「なんだ?また変な妄想して勝手に不安がってたのか。」





「いやいや、してませんそんな事!不安になんてなってません!」





もう翔さんにとっては今更な話題を引っ張り出して分かりやすく動揺する私に、翔さんは、バーカと言って笑う。




ブラックを啜る音が聞こえた。





「お前の頭ん中どーなってんのか覗いて見てぇわ」





「う…私は翔さんの頭の中覗いて見たいですっ。」





「俺?言ってやろうか?俺の今の頭ん中は…俺が買った下着を着けたお前がベッドの上でパジャマのボタンを外して…」





「いやぁぁぁー!も、もうやめてぇ」





と、最後はいつもこうやって弄られるんだ。




そして満足そうにククッと笑っては、フワリと優しくおやすみと言う。





瞼を綴じると、そっと頭を撫でられてるような感覚。





大きなベッドに身体を小さく丸め、翔さんの余韻に浸りながら、夢に出て来てくれるよう願った。

















翌日会社で、井上さんがまだ帰国していない事を、他の秘書の方から聞いた。












< 190 / 242 >

この作品をシェア

pagetop