イイコでしょ?











吐き出したくなるといつも、廊下の突き当たり、窓の外を見下ろしながらミックスジュースを飲んでいた。




大好きなミックスジュースだけど、らしくないって周りに言われるのが嫌で隠れて飲んでたの。





悔しくてやり切れなくて、泣きたいけど泣けなくて。





唇を噛み締めてる私にいつも、笑ってよ、と言ってくれる人が居た。





笑ってれば、きっといい事あるよ。って、事情なんて何にも知らないクセに。





ニカって笑って私にそう言い続けて。





あの人が、今の私見たら…





どう思うかしら。





どんな顔、するのかしら。
















「ごめんなさい…ちょっと酔っただけ。」






「ウソ。何かあんだろ?仕事のパートナーとして聞いてやっから、言ってみろ。な?」





俯いて、考える。




笑ってれば、きっといい事あるよ。




あの人の笑顔が浮かんだ。




目の前の彼じゃなく、あの人の。




鈍臭そうな、あったかい笑顔。




その瞬間、いろんな事に囚われ続けていた私の心が、




フワッ…




優しく包まれた、気がした。





ふふ、




少し笑って。




顔を上げた。





「ほんと、ちょっと飲み過ぎちゃっただけよ。奥様に悪い事しちゃった。気にしないで?」

















今笑ってるよ?




いい事、あるかな?












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