イイコでしょ?












怖い怖い怖い怖い…




バタンとドアを閉められ、サングラスの女の人が運転席へと回ってくる間に、誰か助けを呼ぼうと慌ててカバンを漁るのに…





ないっ!




ないないないないっ!?




何で?ケータイないっ!!




かき回すようにして探してみるけど、あるのはケータイのイヤホンのみで、ケータイの姿はどこにも無かった。






そうだ今日会議や打ち合わせばっかでケータイ触る暇なかったからデスクの引き出しに閉まったまんまだ…





くぅぅぅ…ヤバイよ。




何でこんな日に限って新井さん居ないのよ!





ボディーガードのくせに!!





考えている間に、女の人は隣の運転席に乱暴に乗り込んで来た。


















鼓動がトクトクトクトク…早足で駆け抜ける。





怖さでカバンを抱えて身体をキュッと小さく丸めた。





すると…






「あなた、この間拓人くんと一緒にラーメン食べてた子よね?」






聞き覚えのある高い声に、きつく結んでいた瞼をパチパチと震わせる。





ゆっくりとその声の主の方に顔を向けてみると、




その女性の正体が、この間佐藤さんと週刊誌に写真を撮られていた女優さんだと言う事が分かった。






「…星…カレン…さん?」





サングラスを外したその瞳は少し赤く腫れていて、泣いた跡なんだと気づく。





なんでカレンさんが、私を?





そう思う間もなく、カレンさんがあの甘ったるい声で話し始めた。




「急にこんな事してごめんなさい。」






「は、はぁ…」





「拓人くんの家に行ったけど留守で…ここに立ち寄ったらたまたまあなたの姿を見つけて…」






最初の印象とは大分違って、なんだか急にしおらしく、モジモジしたように話すカレンさん。




消え入りそうなその声に私も一生懸命耳を傾けた。
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