イイコでしょ?
私の仕事は、社員さんのサポート的な役割で、細々とした入力作業から、毎日のように行われる会議のお手伝いまで、結構やる事はたくさんあって。





基本は言われた仕事をこなして行くんだけど、やったらやった分だけ、キチンと評価してくれる。





それは社員も派遣社員も同等に。





さすが大手企業。





私も以前海崎さんと松本さんと一緒に考えた企画をプレゼンした時、高く評価してもらい、


お給料とは別にボーナス的な感じで、纏まった額の『ご褒美』を頂いた事があった。





私はアイディアを少し出しただけで、プレゼンはほぼ海崎さんと松本さんがしてくれたから申し訳なく思ったけど。





「美希ちゃんのアイディアが無かったら出来なかった企画だからね!」





「ほんと感謝してるよ!」





と、二人が言ってくれたので、なんだかとても嬉しく思った。





そんな会社を離れるのは少しさみしいけど…





これが派遣社員の運命なんだ。
















「ちょっと、コーヒー買ってくる。二人は?」






カバンを漁って財布を取り出しながら尋ねるけど、さっき買ってきた、と言う返事が返って来たので自分の分だけを買いに行く事に。






オフィスを出て長い廊下をカツカツとパンプスを鳴らして歩く。





踵が大分磨り減って、中の金属の音がたまに聞こえて来た。





新しく買い替えなきゃな…





うーん、と両手を伸ばして伸びをする。





トイレの横の自販機の前まで来ると、業者の人が補充している最中だった。





目が合うと、すいません、と申し訳なさそうに頭をさげる。





大丈夫です、と笑ってもう一つ上の階まで買いに行く事にした。





今日は夜あのドラマがあるから早めにお風呂入っちゃお!なんて考えながら広めの給湯室にあるズラっと何台か並んだ自販機の前に立つ。






財布から小銭を探していると、誰か急ぎ足でこちらにやって来る気配がした。





この階は社長室のある階で滅多に来ないから、なんだか緊張しちゃって、早く買って仕事に戻ろうと、急いでお金を取り出した。






すると、さっきの足音が、息を切らせて真後ろまでやって来たのが分かったので、思わず振り返る。
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