緑と石の物語




「ねぇ、レヴ。」

「なんだ?」

「どこかに遊びに行かない?」

「どこに行きたいんだ?」

「あたしじゃないよ。
リーズをどこかに連れていってやらないとかわいそうじゃないか。
せっかく遠くから来てるのに、リーズはここへ来てからまだ果樹園しか連れていってないんだろ?」

「そうだな…
私もそのことは気にはなっていたのだが、リーズさんは料理をするのが楽しいと言われるもんでな。」

「馬鹿だね、そういう時はあんたが気を利かせてどこかへ誘えば良いんだよ。」

「迷惑にはならないのか?」

「なるわけないだろ、リーズはあんたのことを…」

「え…?」

「な、なんでもないさ。」

「そうか。では、どこか考えてみることにしよう。」



その晩の夕食の席で、レヴは皆に提案した。

「最近、どこにもでかけてないことだし、明日は久しぶりにピクニックでもいってみないか?」

「それは良いですね。
私も最近は部屋で本ばかり読んでいたもので、少し外に行きたい気分だったんですよ。」

「本当にヴェールは本ばっかり読み過ぎだよ。
たまには外にいかないとね!
ね!リーズ、明日はまたおいしいものをたくさん作っておくれよね!」

「はい!」

リーズが微笑んでうなずいているのを見てレヴは安心した。



「では、明日…」







次の日は朝から爽快な青空だった。

「良いお天気になって良かったですね。」

「あたしは日頃の行いが良いから、でかける時はいつもお天気なんだよ。」

馬車で山のふもとまで小一時間走って、そこからは徒歩で登ることになった。



「皆さん、本当に足が丈夫なんですね。」

「そりゃあそうさ。
あたし達、ここに来てからは馬車ばっかり乗ってるけどさ、旅をしてた時はそんなもの乗ったことがなかったからね。
それに、なんだかわからないけどよく山道を歩いたよね。」

「そうだな。
考えてみれば山ばっかり歩いていたような気がするな。」

そういって笑う四人の姿を見ていると、リーズは自分だけがよそ者みたいな疎外感を感じた。

皆の顔にうっすらと汗がにじんできた頃、ようやく丘の上の着いた。
涼やかな風が五人の頬に心地良くそよぐ。



「あぁ~、やっぱり外は良いね!
お昼にはまだちょっと早いし、ここらでちょっと散歩でもしようか。」

「そうだな、あっちの方に綺麗な所があるのだが…」

「あ!あそこに変わった鳥がいるよ。
ジネット、ヴェール、見にいこうよ!」

サリーはせきたてるようにジネットとヴェールを誘い、走り去った。



(サリーさんったらどうしたのかしら?
……まさか、レヴさんとリーズさんに気を利かせて…?)

ジネットは残された二人をそっと振り返る。



「…行ってしまいましたね…
では、私達は向こうへ行ってみましょう。」

「は、はい!」

そこには色とりどりの花が咲き乱れていた。



「まぁ、綺麗!」

「素晴らしいものですよね。
誰の手を借りたわけではないのに、こんなに見事な花畑が出来ている…」

「自然の力って、素敵ですね…」

「人間等いなくても、こうして自力で美しい花を咲かせるのですからね…
たいしたものだ…」

二人は目の前に広がる花畑を黙ってみつめていた。
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