緑と石の物語




「レヴ~~!
リーズ~~!
そろそろ、昼食にしようよ。」

レヴはサリーの声に手を振って応えた。



「リーズさん、行きましょうか…」

「…はい」

昼食の時のレヴは、いつもとまるで変わりがなかった。



(……もしかしたら、さっきのことは私の妄想だったのかしら…?)



リーズはもやもやした気持ちを胸に抱えたまま、皆と共に屋敷へ戻った。
屋敷に戻ってからも、気持ちはまるで落ち着かず、夕食も何を食べているのかさえわからないありさまだった。

もう考えるのはよそう…そう思えば思うほど、あの時のことを考えてしまう。



(レヴ様は一体どういうお気持ちなのかしら…
私のことがわずらわしいのかしら…
やっぱりもう諦めた方が良いのかしら…)

思いあまったリーズは、ジネットの部屋を訪ねた。



「まぁ、リーズさん、どうなさったの?」

「ジネットさん…私…どうしたら良いのか…」

それだけ言っただけで、リーズの瞳には涙があふれそうになっていた。



「…とにかく中へ…」

「ちょっと待っててね。」

ジネットは、リーズを椅子に座らせ部屋を出ると、すぐにお茶の用意を運んできた。



「これはお昼に摘んできたハーブなのよ。
気分が落ち着くから飲んでみてね。」

「ありがとう、ジネットさん。
とても良い香りだわ。」

リーズがお茶を飲み干すのを待って、ジネットは声をかけた。



「今日はどうしたの?
何かあったの?」

「……実は…」

リーズは昼間の出来事をジネットに打ち明けた。



「…そんなことが…」

ジネットは、驚いた表情でリーズをみつめる。



「ジネットさん…私、どうしたら良いのかしら?
私…レヴ様のお気持ちがまるでわかりません。
だから…不安で…」

「そうね…
レヴさんはあまり感情を表に出されることがありませんからね…
でも、なにかとても熱心に研究されてることは確かなの。
詳しいことは私も知らないのだけど…
意思の強い方だから、きっとその結果を出されるまでは旅はやめられないと思うわ。」

「そうなんですか。
何かの研究を…
では、先のことはわからないというのは本当のことなんですね。
私のことがお嫌いで、そんなことをおっしゃったわけではないんですね。」

「それはないと思うわ。」

「そうですか、良かった…!
でも、待っていて良いとはおっしゃらなかった…」

リーズの表情がにわかに暗く沈んだ。



「そうね…
レヴさんはきっとあなたのことを考えてらっしゃるのよ。
ご自分のためにリーズさんを不幸にしてはいけないと考えられてるんだと思うわ。」

「そんな、不幸だなんて…
レヴ様のお帰りを待つことが出来れば、私にとってこんな幸せなことはありません。」

「リーズさん、あなた、そこまで真剣にレヴさんのことを…」

「ええ。
私の気持ちは変わりません!
天に誓って…」

「わかりました。
では、私がレヴさんのお気持ちを確かめてみます。
でも、もし、それで良くない結果が出てしまったら…
リーズさん、あなたはそれに耐えられますか?」

リーズは一瞬目を大きく見開き、そしてしばらくした後にジネットの瞳をみつめ、深く頷いた。



「……大丈夫です。
その時はすっぱりと諦めます。
このもやもやした気持ちのままでいる方が、ずっと辛いんですもの…」
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