緑と石の物語




「…そんなことがあったんですか!!」

「私もなぜそんなことをしてしまったのか、正直、よくわからないのだ。
それで、君に相談しているのだが…」

「…リーズさんはそこまであなたのことを真剣に考えられていたんですね…」

その時、レヴの部屋の扉ををノックする音が響いた。



「誰だろうな、今時分…」

しばらくして部屋に入ってきたのはジネットだった。



「まぁ、ヴェールさんもいらっしゃったんですか?」

「ジネットさんでしたか。」

「実は…レヴさんにお話があるのですが…」

ジネットは、ヴェールの方をちらっと見た。



「私は席をはずしましょうか?」

ジネットは迷っているようだった。



「あの…実は、お話というのリーズさんのことなんですが…」

「リーズさんの?
今、私もリーズさんのことでヴェールに話を聞いてもらっていたのです。」

「そうだったんですか。
では…ヴェールさんもご事情はおわかりなんですね。
……単刀直入にお聞きしますが、レヴさんはリーズさんのことをどう想っていらっしゃるんですか?」

「これはまたストレートな質問ですね。
実をいうと……私自身にもよくわからないのです。」

「よくわからない?…どういうことですか?」

「言葉の通りです。
リーズさんのことはもちろん嫌いではありません。
いや、むしろ、一緒にいるとなんだか落ちつきますし、かと思うと心配にもなり…そういう意味ではとても気にかかる存在です。
……ただ、それが恋愛感情なのかどうかといわれると…」

そう言いながら、レヴは小さく首を振る。



「レヴさん、どうしてそんなに小難しくお考えになるんですか?
もっと簡単に考えられませんか?
好きか嫌いか…ただ、それだけで良いのではありませんか?」

「…そういうわけにはいかないでしょう。
私が無責任なことを言えば、それでリーズさんの人生が変わってしまうかもしれないのですから…
私は、ただでさえ、いつ終わるともわからない旅に出ようとしている身です。
それに、あなたもご存じの通り、私は死にかけたこともありました。
今後の旅でまた同じようなことがないとも限らない…
それがわかっていながら、私を待っていてほしいなんてことが言えるでしょうか…?」

ジネットは、レヴのその言葉に、満足そうな笑みを見せた。



「レヴさん…今のお話であなたのお気持ちがわかりました。
あなたもリーズさんのことを愛していらっしゃるのですわ…」

「なぜ、そう思われるのです?」

「愛していらっしゃるからこそ、リーズさんのことを真っ先に考えられるのですわ。」

「しかし、私達は出会ってまだ間もありません。
お互いのことをまだよく知りもしない状況だ。」

「愛することに時間なんて関係ありません。
相手のことなんて何も知らないまま、一目で好きになってしまうことだって世間には珍しい話ではありませんわ。」

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