緑と石の物語
「ですが……」

「ジネットさん、こういうことはすぐに答えが出せることではないんじゃないですか。
レヴさんにももう少し考えさせてあげて下さい。」

「…すみません。
それはそうですね。
私…焦りすぎてましたわ。
リーズさんがあまりにまっすぐな目をしてらっしゃるもので、なんとかしてさしあげたくて…
……でも、私、思うんです。
リーズさんは本当に裏表のない純粋な方ですわ。
あんな方と結ばれれば…レヴさんはきっとお幸せになれるのではないかと…」

「そうですね。
私もリーズさんはとても心の綺麗な方だと思いますよ。
何事に対しても一生懸命で…可愛らしい方ですね。」

「……そうだな…」

その晩、四人は様々な想いを胸に抱いていた。

なんとかリーズに幸せになってほしいと祈るジネット…
レヴには、旅に出ないという選択もあるのではないかと考えるヴェール…
期待と不安で胸がいっぱいのリーズ…

そして、レヴは、リーズに初めて会った時のことを思い出していた。

子供でもないのに、相手の目を見て話すことも出来ない程のはにかみ屋で…

少しほめただけですぐに真っ赤になってしまう。

ジネットの言う通り、純粋でまっすぐで何事にも一生懸命で、それゆえに泣いたり喜んだりと感情がすぐに表に出てしまう…

かけひきも何も出来ない無器用な女性…

…だからこそ、白百合なのかもしれない…

いつも自分に正直で、それは嘘、偽りがないということで…
だからこそ気高く、飾ることをしなくてもありのままで美しい…



(……私は…白百合が愛しい…)



レヴは、自分の気持ちを確認したような気がした。

しかし、だからこそ、彼女に悲しい想いをさせたくはないと強く感じる。

そばにいてやれないのでは、彼女を守ることすら出来ない。

だが、旅をやめるわけにはいかない。
この旅は、だれのものでもない…
リーズにふと漏らしてしまった通り、自らに課せられた「使命」であるように思える。






……そして、ついに、レヴの気持ちは決まった。
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