緑と石の物語




「リーズさん、少し歩きませんか?」

「は、はいっ!」

次の日、いつもと全く変わらないレヴの様子にリーズはほっとしたような…しかし、どこか寂しいような複雑な気持ちをリーズは胸に抱えていた。



(私が昨日言ったことなんて、レヴ様はなんとも感じてらっしゃらないんだわ…
そうよね…レヴ様を好きだという女性なんて星の数ほどいらっしゃるんですもの。
でも、怒ってらっしゃらなくて良かった…)



レヴは、リーズと花壇の方へ歩いて行った。



「リーズさん…
昨夜、いろいろと考えたのですが…」

「レヴ様…もうそのお話は忘れて下さい。」

「あなたのことを忘れろとおっしゃるのですか?」

「え……?!」



(今のはどういう意味…??)



「お話しない方が良いですか…?」

「……い…いえ…話して下さい!」

「リーズさん…
私は、あなたを愛していることに気付きました。」

「え…?今…なんと?」

リーズの鼓動がにわかに激しくなった。



「私はあなたを愛しています。」

「レ…レヴ様……!!」

思いがけないレヴの言葉に、リーズは感情的にレヴの胸に顔を埋めまた泣き出した。

レヴはそんなリーズの背中をそっと抱き締めた。

リーズの胸の高鳴りがレヴに伝わる。
温かで純粋なその想いが……


しばらくして、ひとしきり泣いたリーズにレヴはハンカチを差し出した。



「どうぞ…」

「い、いつも…すみません…
レヴ様のブラウスまで…汚してしまって…」

「そんなことは構いませんよ。
着るものはいくらでもありますから。」

「レヴ様…」

赤い鼻をした泣き顔のリーズが微かに笑った。



「リーズさん…私が旅から帰って来るのを待っていて下さいますか?」

「は、はいっ!」

「いつになるかわからなくても…?」

「はいっ!」

「…ありがとう、リーズさん。
それと…一つだけあなたにお願いしたいことがあるのです。」

「なんですか?」

「……もしも、私を待っている間に好きな男性が出来たら…
その時はその方と結婚してほしいのです。」

「そんな…!
私…どんなことがあっても、絶対にレヴ様のお帰りをお待ちします!!
他の人なんて好きになりません!!」

「リーズさん、あなたはきっとそうおっしゃると思っていました。
しかし…それなら、話は別です。
あなたが私の頼みを聞いて下さらないのなら、私もあなたに私の帰りを待ってくれとは言えません。」

「そんな……」
< 106 / 199 >

この作品をシェア

pagetop