緑と石の物語
「どうなさいますか…?」

「……わかりました。
レヴ様のおっしゃる通りにします。
でも、好きな男性が現れなければ…私はいつまでもレヴ様のことをお待ちして良いのですね…?」

レヴは深く頷いた。



「ここへ帰って来た時に、あなたの笑顔に出迎えられたら…
私にはそれ以上に嬉しいことはありません。」

「レヴ様…!!」

レヴは、リーズを抱き締め口付けた。
それは、最初の時よりもずっと長いキスだった。



(……しょっぱい……)



リーズの二度目のキスはまた自分の涙の味がした。

でも、心の中は違う…
夢のような心地良さは、どんな砂糖菓子よりもずっと甘い…

(ずっとこうしていたい…)






「ヴェール…、ちょっと良いかな?」

レヴはヴェールの部屋を訪ねた。



「どうかなさったんですか?」

「……実はな…」

レヴは、さっきの出来事をヴェールに報告した。



「それは本当ですか!?」

「驚かせてすまない…
だが、実を言うと一番驚いているのは私自身かもしれない。
こんなことになってしまうとは、数日前までは考えもしなかったのだから…」

「人とのめぐりあいというものは、もしかしたらそういうものなのではないでしょうか?
私は初めてレヴさんとリーズさんの姿を見た時から、お二人にはなにかしら不思議な縁のようなものを感じていましたよ。」

「そうか…
君はそういうものに、敏いのかもしれないな。
私と彼女には、なにかそういう縁があったのだろうか…」

レヴは、そう言いながら静かに微笑む。



「でも、とてもおめでたいことじゃないですか!
ご結婚はいつされるんですか?」

「それはまだずっと先のことだ…」

「なぜですか?
何か伸ばさなくてはならない理由でもあるのですか?」

「彼女を旅に連れていくわけにはいかないではないか…」

「なんですって?
レヴさん、こんなことになったのに、まだ旅に出られるおつもりなんですか?」

「当たり前ではないか。
リーズさんにももちろんそのことは話した。
彼女は、私の帰りを待つと言ってくれている…」

「ですが…いつ帰れるかわからないんですよ。
そんな長い間待たせるなんていけませんよ。
…どうか、レヴさんはこのままこちらに残ってください。」

「ヴェール…私がそんなことを言われて、素直に旅をやめるとでも思っているのか?」

「それは……」

レヴがそうするはずがないことはヴェールにはよくわかっていた。

しかし、リーズのことを考えると、やはりレヴが旅に出るのは良くないことだと思える。
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