緑と石の物語




「ヴェール…まさかとは思うのだが…」

レヴはリーズの指輪のことを話した。



「どういう感じでした?
なにか不気味な印象でもあったのですか?」

「いや…そういうものは何もない…
ただ、私もあのアマゾナイトにおかしなものは感じなかったし、彼女はとてもその指輪が気に入っているようだった。」

「どういった経緯の指輪なんですか?」

「それもまだわからない…」

「そうですか…では、明日にでも私がそれとなく聞いてみます。」







「リーズさん、素敵な指輪ですね。
ちょっと見せていただけませんか?」

「あら、ヴェールさんは石がお好きなんですか?
とても綺麗なムーンストーンでしょう?」

ヴェールが石に触れようとした時、リーズは不意に手をひっこめた。



「だめですわ。
この手の石は、他人には触れさせてはいけないそうです。」

「それは失礼しました。
あまりに綺麗だったものでつい…
…ところで、その指輪は最近買われたのですか?」

「ええ、実は…」



(あ…!いけないわ!
露店で買った安物の指輪をつけてるなんて知られたら、またレヴ様が気を遣われるかもしれない…)



「あの…これはおばあさまの形見で、ずっと付けてなかったんですけど、久しぶりに見たらなんだか急に懐かしくなってしまって…」

「おばあさまの…
そうでしたか。
だから、お守りなんですね。」

「そ、そうなんです!」

ヴェールはほっと胸をなでおろした。
そういう素性の明確なものなら、魔石であるわけがない。

ヴェールはそのことを早速レヴに伝えた。



「…そうだったのか…
それなら、心配はいらないな。
ありがとう、安心したよ。」

「私達、少しばかり神経質になりすぎていたのかもしれませんね。」

「そうだな…
石を見るとついおかしな妄想にとらわれてしまうようだ。」

「無理もありませんよ。あんなことがあったのですから…」

「早く忘れたいものだな…」

ヴェールはゆっくりと頷いた。

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