緑と石の物語




「では、行ってまいります。」

「気を付けて…」

リーズとエリサはパーティの時に着るものを取りに屋敷へ戻った。



「家はやっぱり落ち着くわね…!
…ねぇ、エリサ…
どうしてレヴ様は私を選んで下さったのかしら?」

「突然、どうなさったんですか?」

「だって…
ローラさんってあんなに素敵なのに…
私なんかとは、とても比べ物にならないじゃない…」

「確かにローラ様は、素晴らしい女性ですわ。
でも、レヴ様が旅に出られてる間にフレデリック様とご結婚なさったということですから、待つ事にお疲れになったのかもしれませんね。」

「そうなのかしら…
…私もレヴ様と長く離れていたらそんな気分になってしまうのかしら?」

「大丈夫ですわ。
リーズ様は昔から頑固と言いますか…いえ、我慢強い性格でいらっしゃますし…
それに、ほら…リーズ様にはそのお守りがあるじゃありませんか!
その石は遠く離れた恋人達の心を繋いでくれる力を持っているのでしょう?」

「…そうだったわね!
ありがとう、エリサ…」

荷物の準備は思ったよりも早く終わった。



「あら、まだこんな時間だわ。
ねぇ、エリサ…少し、裏山の方を散歩していきましょうよ!







「レヴ、明日飾るお花はこんな感じで良いかしら?」

「あぁ、とても綺麗だ…
ありがとう、ローラ…
あ……」

「どうかしたの?」

「…すまないが、白百合も混ぜてもらえないか?」

「あ…わかったわ…
そうだったわね。」

「なんだい?何がわかったんだい?」

「フレデリックはまだ気付いてないのね…」

「なんだよ、ローラ、教えてくれよ。」

「白百合はリーズさんのお好きな花なのよ。」

「そうか…
それは気付かなかった…」


フレデリックの屋敷では、明日のパーティの準備が着々と進んでいた。

まさかこんなことになるなんて、つい最近までレヴは想像もしていなかった。
いや、レヴだけではない。
誰も想像していなかったことだ。



(…まだ信じられないな…
私が婚約だなんて…)



そんなレヴの想いをかき消すように、エリサの悲鳴にも似た声とけたたましく廊下を走る音が聞こえてきた。



「レヴ様~~!!
大変です!
リーズ様が…リーズ様が…」

「エリサさん、どうしたんです!?
落ち着いて…!!」

「リーズ様が…!!」
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