緑と石の物語
「リーズ……君は本当に人のいうことを聞かない人だから…」

レヴはリーズの動くことのない腕を両手で握り締めた。
熱い涙がレヴの頬を伝う…

ついほんの数時間前まで幸せの絶頂にいた自分が、今ここにこうしていることがレヴには信じられないような気がした…



「リーズ…」

リーズの手に頬を寄せたレヴはあることに気が付いた。



(指輪が…!!)



「エリサさん!リーズの指輪は…おばあさまの形見のあの指輪は?!」

「おばあさまの形見?
どんな指輪です?」

「この前からリーズがつけていたあの指輪です!」

「レヴ様、あれはおばあさまの形見などではありませんわ。
あれは、先日出かけた市の露店で買われたもので…リーズ様、あの指輪をとても気にいっていらっしゃって…
あれがないのですか?!」

「市の露店で…!!」

「レヴさん…!!」

レヴは見えないなにものかに身体を締めつけられるような不気味な感覚を感じた。



(サリーのカードが意味するものはこれだったのか……!!)




「……エリサさん、リーズのことを少しの間よろしくお願いします。」

「……わかりました。」

レヴはヴェールを中庭に呼び出した。



「レヴさん!
リーズさんのあの指輪は…」

「あぁ…魔石だったのだろう…」

「なんてことだ…!
もっと早くにわかっていたら…!」

ヴェールは拳を握りしめ、悔しさに身を震わせた。



「今更そんなことを言ってもどうしようもない…
魔石はリーズの命を奪う事できっと砕け散ったのだ…」

「命を…!!
では、リーズさんは…」

「あぁ…明日の朝まではもたないとフレデリックに言われた…」

「そんな…!!」

ヴェールの顔はみるみるうちに血の気が引いて行く。



「……ヴェール…君に頼みがある…」

「…何です…?」

「…君の血がほしいんだ…」

「……!!
なんですって?
私の血を…?」

「…そうだ…
私はさっきフランツさんのことを思い出したのだ…
フランツさんは、森の民の血をもらい傷の治りも早く130年以上生きてらっしゃる…
ならば、リーズに君の血を輸血すればもしや…」

「…し、しかし…私は、半分は人間です。
純粋な森の民ではありません。
それがもしもなにか災いしてしまったら…」

「ヴェール…
私は…今、藁にもすがりたい気持ちなのだ…
君の血をもらってなにか異変があったとしても構わない…
リーズの姿が変わろうと、障害が起きようとリーズが生きてくれさえすればそれで良いんだ…
頼む、ヴェール…
リーズを…リーズを助けてくれ!!」

ヴェールの両腕を握りしめ、レヴは感情的な声で懇願する。



「レヴさん…
もし、拒否反応のようなものが出てそれがリーズさんの命を奪うような事になっても良いのですか…?」

「あぁ…
いずれにせよ…このままではリーズは…朝まで生きられないのだから…」

レヴはそう言って、唇を噛みしめた。



「わかりました…」
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