緑と石の物語




「フレデリック…頼みがある…」

「なんだ、レヴ?」

「ヴェールの血を、リーズに輸血して欲しいんだ…」

「レヴ…わかってくれ…
血がたりないとかいう問題ではないんだ…
彼女の内臓は気の毒な程に壊れている…
折れた骨が肺に刺さっていた…
衝撃で破裂した臓器もある…
脳にも大きなダメージを受けている…
諦めるしかないんだ…」

「頼む…フレデリック…
ヴェールは…特別なんだ…」

「レヴ…君こそわかってくれ…
気の毒だが…」

「フレデリックさん、お願いです。
どうかなにも言わずに私の血を抜いて下さい!」

二人の気迫に押され、フレデリックはヴェールの腕に針を刺した。
ヴェールの血が注射器に吸い採られていく…



「こ、これは……!!」

注射器に吸いこまれた血は鮮やかな緑色だった。



「フレデリック、頼む…
詳しいことはあとで話す。
とにかく今は私を信じて、私の言う通りにしてくれ!!」



ヴェールの血がリーズの身体に入っていく…
レヴはその様子をじっとみつめていた…



空を染めながら、オレンジ色の朝日が上がっていく…

リーズに変化は見られないが、少なくとも死んではいなかった。



「奇跡だ…
とてもじゃないが、こんなにもつはずはないのに…」

「フレデリック…ヴェールのことは後でゆっくり話すから…
このことは誰にも言わないでくれ。」

「…わかってるさ。
言っても誰も信じないようなことを言いはしないさ。」



それから数日が過ぎた。

「レヴ、見てみろよ。
あんなに深かった傷がほとんど見えなくなっている!」



リーズは相変わらず目覚めることはなかったが、身体の傷は信じられない早さで回復していた。

「おそらく、内臓も治ってきているのだと想う…
医者としては信じがたい話だが、今こうして奇蹟は目の前で起こっているんだ。
否定出来ないな。」

「ありがとう!ヴェール!
君のおかげだ…!
君がいてくれなかったら今頃リーズは…」

「いえ、おかしな反応が出なくて幸いでした。
しかし…リーズさんはまだ意識が戻らないのはなぜなんでしょう?」

「頭を打ってるのが原因かもしれないな…
しばらく様子を見てみよう…」



しかし、それからもリーズの意識が戻る事はなかった…
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