緑と石の物語




「レヴ様…この度は大変お世話になりました。
フレデリック様のおっしゃるには、身体はもうほとんど問題はないそうです。
ですが、リーズはあの通りまだ目を覚ましません。
フレデリック様は脳に問題があるのだろうとおっしゃってます。
ヨハンの見立ても同じでした。
それで…明日、家に連れて帰ろうと思っています。」

「そうですか…
リーズにとってもその方が良いかもしれませんね。」

あれからすでに一ヶ月の日々が過ぎていた。
リーズは、ベッドの上でとても安らかな顔をして眠っていた。
まるで、楽しい夢でも見ているあのように…



次の朝、リーズを家へ連れて帰るための馬車が到着した。

「レヴ様…本当に今までありがとうございました。」

「いえ…私はなにも…
リーズ…
しばらく離れることになるが…
どうか私が帰って来るまでには、目を覚ましておくれ…」

「レヴ様…!
リーズは…この先、どうなるかわかりません。
どうか…リーズのことはお忘れになって下さい。」

「何をおっしゃっているんです。
私が妻にすると決めた相手はこのリーズだけです。
その気持ちは今も少しも変わってはおりません。
リーズ…これを受け取っておくれ…」

レヴは、リーズのか細い左手の薬指に輝く金の指輪をさした。



「レヴ様…それは…!?」

「順序が逆になったけど、許しておくれ…
式は君が目覚めてからだ…」

「レヴ様!!
あ…ありがとうございます…!
…リーズ、良かったな…
レヴ様が…おまえにエンゲージリングを贈って下さったよ。
わかるかい、リーズ?」

「リーズ様、おめでとうございます…」

リーズの両親もエリサも流れ出る涙を止めることが出来なかった。



「では、リーズのことをどうぞよろしくお願いします。」

レヴの見守る中、リーズを乗せた馬車がどんどん小さくなっていく…



(リーズ…
必ず元気になるんだよ…)

レヴは馬車が見えなくなるまでずっとその場で見送っていた。
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