緑と石の物語
*
「お帰りなさい!」
「ジネットさん、店番しててくれたんじゃな。
どうせ誰も来んかったじゃろ?」
「え…?……えぇ…、誰も…」
「ハハハ、いつものことじゃからな。
さて、早速、夕食の支度にとりかかるとしますかの。」
「はい。」
ジネットは咄嗟に嘘をついてしまった。
(……でも、あれは私が個人的に買ったものだから…
報告しなくても大丈夫よね…?)
多少の後ろめたさを感じながらも、ジネットはピエールに指輪のことを言わなかった。
「しかし、遅いのぅ…」
夕飯の支度もすっかり整ったというのにレヴとサリーはなかなか帰って来なかった。
「もしかしたら、向こうで引き留められてるのかもしれませんね。
先にいただきましょうか。」
「そうじゃな、西の塔の…」
「ピエールさん!!」
ヴェールの必死の目配せでピエールは思い出した。
ジネットには、レヴ達は知人の家に行ったということにしていたことを…
「西の…そうじゃ!西向きの戸が最近ガタガタしていてのう…
ヴェールさん、あんた、大工仕事は出来るかい?」
「あ、あぁ、簡単なことなら出来ますから、あとで見てみましょうね。」
「すまんのう、ヴェールさん。」
ジネットは二人のそんな下手な芝居を気にも留めていないようで、黙々と食事をしていた。
「ジネットさん…どうかしましたか?」
「え…?
なにがですか?」
「なんだか…いつもと違うような…」
「いやだわ、ヴェールさん。
私はいつもと同じですよ。」
そういうジネットの顔は微笑みに溢れていた。
「そういえば、なんだかとても楽しそうじゃな。
なにか良いことでも?」
「ま、まさか!ピエールさんまでなにをおっしゃるのです。
良いことなんて何もありませんわ。
私はいつも通りです。」
そういって否定するジネットの顔は、やはりどこかほころんでいる。
「そうですか…?」
「ピエールさん、この野菜のスープ、とてもおいしいですわ。
それぞれの野菜の持ち味がとても良く出ていて…」
微笑みの理由はこのスープのおかげだと言わんばかりに、ジネットはスープを誉めた。
(…いやだわ。
私ったら、そんなに嬉しそうな顔をしてるのかしら?
気を付けなくっちゃ…)
結局、その晩サリーとレヴは戻ってこなかった。
「お帰りなさい!」
「ジネットさん、店番しててくれたんじゃな。
どうせ誰も来んかったじゃろ?」
「え…?……えぇ…、誰も…」
「ハハハ、いつものことじゃからな。
さて、早速、夕食の支度にとりかかるとしますかの。」
「はい。」
ジネットは咄嗟に嘘をついてしまった。
(……でも、あれは私が個人的に買ったものだから…
報告しなくても大丈夫よね…?)
多少の後ろめたさを感じながらも、ジネットはピエールに指輪のことを言わなかった。
「しかし、遅いのぅ…」
夕飯の支度もすっかり整ったというのにレヴとサリーはなかなか帰って来なかった。
「もしかしたら、向こうで引き留められてるのかもしれませんね。
先にいただきましょうか。」
「そうじゃな、西の塔の…」
「ピエールさん!!」
ヴェールの必死の目配せでピエールは思い出した。
ジネットには、レヴ達は知人の家に行ったということにしていたことを…
「西の…そうじゃ!西向きの戸が最近ガタガタしていてのう…
ヴェールさん、あんた、大工仕事は出来るかい?」
「あ、あぁ、簡単なことなら出来ますから、あとで見てみましょうね。」
「すまんのう、ヴェールさん。」
ジネットは二人のそんな下手な芝居を気にも留めていないようで、黙々と食事をしていた。
「ジネットさん…どうかしましたか?」
「え…?
なにがですか?」
「なんだか…いつもと違うような…」
「いやだわ、ヴェールさん。
私はいつもと同じですよ。」
そういうジネットの顔は微笑みに溢れていた。
「そういえば、なんだかとても楽しそうじゃな。
なにか良いことでも?」
「ま、まさか!ピエールさんまでなにをおっしゃるのです。
良いことなんて何もありませんわ。
私はいつも通りです。」
そういって否定するジネットの顔は、やはりどこかほころんでいる。
「そうですか…?」
「ピエールさん、この野菜のスープ、とてもおいしいですわ。
それぞれの野菜の持ち味がとても良く出ていて…」
微笑みの理由はこのスープのおかげだと言わんばかりに、ジネットはスープを誉めた。
(…いやだわ。
私ったら、そんなに嬉しそうな顔をしてるのかしら?
気を付けなくっちゃ…)
結局、その晩サリーとレヴは戻ってこなかった。