緑と石の物語
「以前、この町に来た時です。
私が数日戻らない時があったでしょう?」

「あぁ、思い出したよ!
町で知り合いの人をみかけて、その人を追い掛けたとか言ってたあの時だね…!」

ジネットは黙ってうなずいた。



「あ~あ、あたし達、誰も気付いてなかったなんて本当に馬鹿だね…
ジネットにすっかり騙されてたんだね。」

「ごめんなさい…」

「それで、ジネットさんはなぜヴェールを…いえ、案内人を探していらっしゃったのですか?」

「……それは……ヴェールさんにお渡ししなくてはならないものがあったので…」

ジネットはそう言うと、首にかけた小さな皮袋を取り出し、ヴェールの前におずおずと差し出した。



「なんですか?これは…」

「開けてみて下さい。」

ヴェールは言われた通りに、革袋を開いた。



「……これは!!」

「スタウロライトじゃないか!」

「皆さんはこの石のことをご存じなのですか?!」

「ジネットさん!
もしかして、これは……私の護り石…?」

「その通りです。
あなたのお祖父様、イルヤナ様があなたのために採ってこられたあなたの護り石です。」

ヴェールは、掌のスタウロライトを愛しそうに胸に抱いた。



「では、ジネットさん、あなたはディサさんの…!?」

「レヴさん、なぜ母のことを…!?」

「そうか…そうだったのか…
ジネットさんはヴェールを探して、そして私達はあなたを探し…
お互いがこんなに近くにいることに、長い間気が付かなかったなんて…」

「えっ!!
ジネットがディサさんの娘だってことは…じゃ、ジネットは森の民なの?」

「……その通りです。」

「えーーーっ!
全然、気付かなかったよ!
じゃ、ジネットも肌や髪を染めてたんだね!」

「え…えぇ、そうです。」

「…ジネットさん、実は私もなんですよ。」

ヴェールは、上着の袖をまくりあげた。



「まぁっっ!!」

「あれ?ジネット、そんなに驚いた?
だって、ヴェールは半分は森の民なんだよ。」

「それはそうですが…
ヴェールさんが案内人さんだったとお聞きして、とっさにヴェールさんはダニエルさんの方に似られたんだと思ってしまいました。」

「あたし達が初めてヴェールに会った頃は、とっても綺麗な緑色の髪だったよ。」

「……緑色の……私……もうなにがなんだか……」
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