緑と石の物語




その後もレヴ達は町から町を歩いたが、依然として何の情報も得られなかった。
その間には大きな町もあるにはあったのだが、そこでも宝石にまつわる有力な話は聞けず、ただ、宝石を売りつけられそうになっただけだった。



「レヴ…どうする?
どこかで進路を変更するかい?」

「…そうだな。
それも良いかもしれないな。
これほどまでに情報がないとは考えてもみなかった。
赤と緑というイメージに思い当たるものさえ、皆目みつからないのだからな。」

「そうだよね。
それに、ヴェールとジネットもまったく進歩ないみたいだよ。
いまだに『ヴェールさん』『ジネットさん』だからね。
あたしの努力はなんだったんだよ~!」

「無駄だったともいえないぞ。
君はずいぶんと進化したではないか。
スペルの間違いもなくなってきたし、字も格段にうまくなってきた。」

「だけどさ、ジネットが帰る半年まではもうあんまりないんだよ。
こんな調子じゃこの旅もいつまで続くかわからないっていうのに…」

「そんなことを言っても私達が強制するようなことでもないからな。
彼らは純粋だから、きっと離れても心変わりをする事などないだろう…」

「あんたは本当に甘いね。
ジネットもあの通りの美人だし、森に帰ったら誰かに言い寄られるかもしれないじゃないか。
ヴェールがおち込む姿はもう見たくないからね!
なんとかうまくいってほしいんだよ。
でも、あの二人、まだ手も繋がないんだから…
あぁ、まったくイライラするね!」

「彼等は一緒にいるだけで幸せなのだよ、きっと…」



気が付けば、西の森を出てからもう五ヶ月と少しの時が経っていたのだ。
サリーが焦るのも無理はない話だが、だからといってジネットとヴェールのことも魔石のこともどうにか出来る事でもない…



ある朝のことだった…

「では、私達はまた伝承の聞きこみに行って来ますね。
夕方には戻りますから…」

「はい、わかりました…」

「……ジネット、どうかしたのかい?
なんだか顔色が悪いようだけど…」

「いえ…たいしたことは……
あ……」

ジネットの身体が突然バランスを崩した。



「ジネット!大丈夫かい?!」

咄嗟に駆け寄ったサリーがジネットを支える。



「あれ?ジネット…あんた、なんだか身体が熱いよ。
熱があるんじゃないのかい?」

「まさか…!」

「まさかじゃないよ。
ねぇ、レヴ、ジネットが熱っぽいみたいなんだけど…」

レヴがジネットの額に触った。



「そうですね。少し熱っぽいようです。
今日はゆっくり休まれた方が良さそうですね。」
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