緑と石の物語
「ええ、そうします。」

「ヴェール、今日は付き添っていてあげたらどうだ?」

「いえ、レヴさん、私なら大丈夫です。
ヴェールさんのお邪魔をしては母に叱られますから。」

「大丈夫ですよ。
まだ聞き込みの状態ですから、ヴェールがいなくてもこちらは困ることはありませんから。」

「いいえ、ヴェールさんがいらっしゃったら母のことが気になって私の方がゆっくり休めませんわ…」

「……どうする?ヴェール…」

「ジネットさんもこうおっしゃってますから…
……では、ジネットさん、もし何かあったら宿の方に連絡するのですよ。」

「はい、わかりました。」







「ヴェール、良かったのかい?
ジネットに付き添わないで…」

「ジネットさんは頑固な所がありますから、きっと私がいたら本当に休まれないと思うんですよ…ですから、いない方が良いと思いまして…
それに、熱も高熱ではなさそうですし…」

「あぁ、確かにそれほどひどい熱ではなかったが…
最近は移動が多かったから、疲れが出たのかもしれないな…
とにかく、今日は早めに帰ろう…」

三人はいつものように手分けして情報を聞いてまわったが、今回もやはり空振りだった。



「今日はこのくらいにして早めに戻ろう。」



宿に戻ると、ジネットが出迎えてくれた。

「ジネット、大丈夫だったかい?」

「ええ…昼間は横になってましたし、もう大丈夫だと思います。」

「どれどれ……まだ少し熱があるね。
医者に診てもらえば良いんだろうけど…やっぱりヤバイよね…
熱の下がる薬草はないのかい?」

「あるにはあるのですが、たいした熱ではありませんし…もうしばらく様子をみてみます。
きっとすぐによくなりますわ。」



明日には次の町への移動を考えていたのだが、ジネットの体調を考えて少し遅らせることにした。

しかし、次の日になってもまたその次の日になっても、ジネットの体調に変化はなかった。
高熱とはいえないが、ずっと熱が続いている。
起きていられないというほどではないが、傍目にも体調の悪さが感じられる。



「皆さん、私のことは心配なさらないで下さい。
大丈夫ですから、早く次の町への向かいましょうよ。
隣町へはそれほど遠くはないと聞いていますし…」

「しかし…」

「レヴさん、ジネットさんもこう言ってますから、明日、発ちましょう。
もし、途中でなにかあれば私が背負っていきますから。」

二人の強い申し出により、次の日の朝、出発することとなった。
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