緑と石の物語
そんな時、レヴはあることに気がついた。



「ヴェール!!ジネットさんの指輪を見ろ…!!」

「ゆ…びわ……?」

ジネットがつけていたのはいつものあのルビーではなく、見たこともない見事なルビーだった。



「レヴさん、まさか、これが!」

その時、ジネットのまぶたが力なくゆっくりと開いた。

その瞳になにが映っているのかは二人にはわからない…



「ジネットさん!ジネットさん!!
しっかりするんだ!
わかりますか!ヴェールです!」

ジネットのまぶたが再びゆっくりと閉じ、同時に一筋の涙が流れた…



「ジネットさん!!」

泣き叫ぶヴェールの前で、ジネットの腕ががっくりと力を失くした時、乾いた音を立ててジネットの指の赤いルビーが砕け散った…



「ジネットさん……ジネットさん!!」

ジネットを抱き締め泣き崩れるヴェールに、レヴはかける言葉もみつからなかった…



レヴには今、はっきりとわかったことがあった…
西の塔の魔女が、そして、預言者シャルロが言った「緑と赤」はあのエメラルドと火山ではなかったのだということを…

(なんてことだ…ジネットさんが魔石を持っていたとは…
緑と赤は、ジネットさんとあのルビーのことだったのだ…)



「カタリナ!!」

息を切らしたディサが部屋に現れ、一瞬にして、何が起こったのかを理解した。



「ジネット…!!」

サリーもその場に倒れ込む…

静かな部屋の中に皆の嗚咽だけが悲しく響く…



不意に、レヴの腕の中の赤ん坊が大きな泣き声をあげた。

皆の視線が、一斉に赤ん坊に向いた。



「……サリーさん、お湯を沸かして下さい」

ディサは涙を拭い、レヴから赤ん坊を受け取った。



「カタリナ、よくやったわね…
ほら、ごらんなさい。
赤ちゃんは無事に産まれましたよ。
あら、この子は男の子だわ。
あなたによく似てるわよ…」

「ヴェール…おめでとう…
ジネットさんは本当に立派だ…
命を賭けて、この子を産んだんだ…
それにこの子も…
この子のおかげで、私達は異変に気付くことが出来たのだから…」

「ヴェールさん…抱いてやって下さい。」

ディサから、ヴェールに赤ん坊が手渡される…
ヴェールの腕の中で赤ん坊はまた大きな泣き声をあげた。



「ほら…目元なんてカタリナにそっくり…」

「本当に…そうですね…」



二人の瞳から、また熱い涙がこぼれて落ちた…


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