緑と石の物語
我が家へ…
(…家を出て、ここまで来るのに一体どのくらいの歳月が経っただろうか…)



当然、帰りにも同じような日数がかかると思っていたが、レヴがヴェールにだいたいの場所を伝えると意外にもそんなに遠くないことがわかった。



「そうか…だいぶ遠くまで来てしまったと思っていたが、そうでもなかったんだな。」

「最初から行き先が決まっていればどこへ行くのも早いものですよ。
この旅は行き先も手探り状態でしたからね。」

「そうだったな。」

未だすべてが解決したというわけではないが、ここまで来る時とは精神的な部分もかなり違っている。
今まで三人がずっと抱えていた不安や恐れは、前向きなものへと変わっていた。
これからもまだ困難なことはあるだろうが、いつの間にかそういうものに立ち向かっていく強さや知恵といったようなものが皆の身に付いたせいなのかもしれない。







三人はいつものように、夜明けと共に起き、宿を発った。



「そういえば、あたし達が出発する時って、たいてい良い天気だね!」

「そうだな。
この中に、脳天気な者がいるおかげかもしれないな。」

「なんだよ、レヴ!
それ、もしかして、あたしのことかい!?」

「さぁな…」

いつものようにくだらない会話をしながら、三人の旅は始まった。
レヴにとっては旅というよりは帰郷なのだが…

ヴェールの道案内のおかげで屋敷へは思ったよりもずっと順調に進むことが出来た。
さらに、来た時とは違うルートを辿って進んだため、また新たな旅をしているような新鮮な気分を味わった。
まさに、快適な旅だったのだ。



「ヴェール、君のおかげで本当に助かっている。
君の方向感覚はたいしたものだな。
私は今、自分がどのあたりにいるのかさえ、皆目わかってはいない。」

「もうずいぶんと近付いて来ていると思いますよ。
明日あたり、暗き森のそばを通ることになります。」

「もうそんなに…?
……暗き森か……当然、迂回して行くのだろう?」

「……そうですね。
実を言うと、私としても複雑な気持ちなのです。
立ち寄りたい気持ち半分、近付きたくない気持ちも半分…そんな所です。」

「私達だけなら良いのだが、ジネットさんのことを考えると、やはり避けた方が良いのではないだろうか?」

「私もそう思います。
あの森は私がいなくなってからはおそらく通っている人もほとんどいないと思います。
ですから、迂回した方がジネットさんも自然と思われるでしょうからね。」

「そうだな。
私達もあの森は通らず、迂回して進んで来たことにしておこう。」


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