緑と石の物語
「そういえば、サリーさんとレヴさんの出会いのいきさつはお聞きしたことがありませんでしたね。」

「そうだったか?
アマゾナイトをくれた老人を探しているうちにピエールさんに出会い、そしてそこでサリーと知り合ったんだ。
元はといえば、ただの好奇心だったのかもしれない。
あるいは、私のことがよほど頼りなく見えたのだろうな。
ふとしたきっかけで、こんなことに巻き込んでしまって申し訳無く思うこともあるし、感謝もしている。
ヴェール…
出会いというものは本当に不思議なものだな…
君はそんな風には思わないか?」

「思いますよ…
あなた方があの森を通らなければ、私の生活はきっと変わってはいなかった…」

ヴェールは、どこか遠くを見つめながら、独り言のように呟いた。



「君があの時、私達をみつけてくれていなければ、私達はあのまま命を落としていただろう…」

「あなたがもし暗き森を迂回して別の道を通っていても、私達は出会ってなかった…」

「そもそも、あの石を手にしなければ、私は旅には出ていなかっただろう…
家を出る時も、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったのだからな…
……ほんの僅かな時間のズレや選択するものを変えただけで出会いは変わり、そして、人生さえもが変わってしまうことがあるのだな…」

「…それもすべては神の決められたことなのでしょうか…?
自分で選んで考え行動したつもりのものが、実は神の決められたことなのではないかと感じる事があります。」

「…私にもまだわからない…
ただ、そうであろうとなかろうと、様々な体験が自分の力になっていることだけは確かなのではないかと思う。
…それで良いではないか…」

「…そうですね…
そんなことを考えても答えなどみつかるわけもありませんよね…」

二人は顔を見合わせ、静かに微笑んだ。



「…ところで、私は暗き森を出てから変わってますか?」

「あぁ…君は外見も内面もかなり変化したと思うぞ。」

「…それは…良い変化ですか?」

「もちろんだとも…
君はこれから森の民を束ねていく立場に就くのだ。
今後ももっともっと変わって行くことだろうな。」

「そのことについては、まだ不安がありますが…
良い変化だと言っていただけたのは素直に嬉しいです。」

「そう…それだ。」

「なにがです?」

ヴェールは、きょとんとした顔でレヴをみつめた。



「君は昔はそんなに率直に自分の感情を表す性格ではなかったではないか。」

「…あぁ…そうかもしれないですね…
私は人と会うこと自体が嫌いでしたから…」

「それは仕方のないことだ…
君の髪や肌の色のせいで面倒が起こらなかったのは不幸中の幸いだったと思う。」

「森の暗さが助けてくれたんですね。」

「…森は、君の親類のようなものだからな…きっと彼らが助けてくれたのだろう。」
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