緑と石の物語
「実はさ、今日、森の中を歩いてる時にフランツじいさんのことを思い出してたんだよ。
森の民に会えたら連絡するって言ったまま、忘れてた…!ってことをさ。
そのことをあんた達に言おうとして、あ!今はジネットがいるからまずい!って気付いて言うのやめたんだけどさ。」

「その話がどう関係するんだ?」

「話はまだ途中だよ。最後まで聞きな!
前にフランツが言ってたじゃないか。
森の民の血をもらったから、寿命が伸びたって話…
もし、こんなことがわかったら、森の民達がどんな目にあうかわからないっていって心配してたじゃないか。」

「それはどういうことなんです?」

「…だから…ジネットはそのために森の民のことを調べてるんじゃないかと…」

サリーの思いがけない推測に、レヴとヴェールの目は大きく見開かれた。



「まさか…!あのジネットさんが、そんなことを…」

「私もそれは考え過ぎだと思うぞ。
彼女はとてもじゃないがそんな悪党には見えない。」

「人は見掛けじゃわからないよ。」

「いや、見掛けのことではない。
確かに、彼女は私達に心を開いてない部分はあるが、一緒に旅をしてきて、彼女の人となりはある程度わかっているつもりだ…」

「そりゃあ、私もジネットがそんなに悪い奴だとは思えないけどさ…」

その場にはなんともいえない、気まずい沈黙が広がった。



「……では、少し罠をかけてみよう…」

「罠?どうするのですか?」

「それは……」

レヴはヴェールとサリーに小声で計画を話した。



しばらくして、ジネットが夕食の用意が出来たと三人に声をかけた。

「ごめんよ、ジネット。
あんただけに忙しい想いをさせて…」

「いえ、今夜は簡単なものしか作ってませんから。」

いつものように四人はテーブルを囲んでなごやかに食事を採る。



「そういえば、研究は進んでるのかい?」

レヴの目配せを合図に、サリーが話を切り出した。



「どの研究だ?」

「なんでも緑色の髪と緑色の肌をした人間がいるとかいないとか、おかしな話をしてたじゃないか…」

ジネットの使っていたスプーンが皿の上に落ちて乾いた音を立てた。



「ジネットさん、どうかしましたか?」

「い…いえ、なんでもありません…手が滑っただけで…」

そういうジネットの顔は青ざめ、額には汗が吹き出していた。



「大丈夫かい?
なんか顔色が悪いよ…」

「疲れが出たのかもしれません…
すみません。お先に休ませていただきます…」

ジネットは奥の部屋へ向かって隠れるように去って行った…

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