緑と石の物語
(……実際の所はわからんがな…
私はそんな気がするのだ…)

(じゃ、今夜はあの精霊の木のあたりで休もうか?)

(……そうだな。あそこなら良いかもしれないな。そうしよう。)



「では、今夜の宿にご案内しま~す!」

サリーはおどけてそう言うと、先頭を歩き、皆を精霊の木まで導いた。



「今夜の宿はこちらで~す!
皆様、お好きな場所をお使い下さいませ。」

「まぁ…!立派な木ですね!」

「この木には、ちょっとした言い伝えがあってね…」

「どんな言い伝えですか?」

「うん……なんだかつまらない言い伝えだったよ。
そんなことより、食事の準備をしようよ。
今日のディナーは豆の缶詰でございます~!」

外で缶詰を食べ、星を見ながら眠る…
屋敷を出たばかりの頃のレヴには考えもつかないことだったが、今では、そんなことに対しても何も感じなくなっていた。



(……私もずいぶんと変わったものだな…)







次の日は朝からピエールの店を目指した。
精霊の木から、ピエールの店まではさほど離れてはいない。



「今夜こそ、ちゃんとした所に泊めてあげるからね!
あ…でも、狭いから昨夜みたいな解放感はないよ。
食事もたいしたものはないけど、我慢しておくれよね!」

このあたりはサリーには見慣れた風景らしく、どこを見ても「懐かしい」だの「変わってない」だの言ってはしゃぎ続ける。



「何十年も経ったわけではないのだ。
そんなに急に変わるわけがないだろう。」

「だってさ、あたし、町の近くから離れたことがほとんどなかったからさ。
旅行なんてものもしたことなかったしさ。」

「バカンスの間はどうしていたのだ?」

「バカンス~?
あんた、相変わらずお坊っちゃんが抜けてないんだね…
あぁ、いやだ、いやだ!
あたしらみたいな貧乏人にはバカンスなんて関係ないね。」

レヴは、眉間に皺を寄せ、サリーから顔を背けた。


「そんなことより、あたし、今朝、大変なことに気付いたんだ!
あとで教えるよ。」
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