緑と石の物語
「そんな印象は受けなかったが…」

「あんた、ちゃんと見たのかい?!」

「見たに決まっているだろう!
そんなに言うなら、君が直接見て確認すれば良いではないか!」

「そうだったね。ジネットはバッグを持っていってないんだね。」

レヴとサリーはジネットの使っている部屋へ入った。
何のためらいもなくジネットのバッグを探るサリーを見ながら、レヴは一言言いたい気持ちもあったが、言えば食ってかかられそうな気がしたので口をつぐんだ。



「あ…本当だ…
ものすごく普通の人だね…」

「よく見てみたまえ。
何か不自然な所がないかどうかをな。」

「う~ん……
そうだなぁ…」

サリーは、男性の写真をじっとみつめ、明かりに近付けたり、裏を返したりしていたが、特に不自然な所はみつけられないようだった。

その時、バタン!とドアの開く音がした。



「サリー、まずい!
早く外へ!」

あわてて写真を元に戻し、二人は部屋の外に出る。
それと入れ違いにジネットが入ってきた。



「あれ?ジネット、どうしたのさ?」

サリーは涼しい顔でそう訊ねた。



「ハンカチを忘れてしまって…
それに、バッグを持ってないとどうも落ち着かなくて…」

「でかけるったって近くなんだろ?
あんな大きなバッグ、わざわざ持っていかなくても…」

「ジネットさんは君と違ってみだしなみを心得てらっしゃるからな。
必要なものもおありなんだろう…」

「はい、はい。
あたしはどうせ普段からハンカチなんて気にしてませんよ。
がさつな女ですからね!」

ぷいとむくれてサリーは奥へ去って行った。



「サリーさん……」

「いつものことです。
どうぞお気になさらず…」

「…そうですか…?
では…行ってまいります。
すぐに戻りますから。」

ジネットはバッグを抱え、再び外へ飛び出して行った。
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