緑と石の物語
「こんな所でかくれんぼしたら、一生みつからないね。
あんた、母家に行く時いつもこんなにたくさん歩いてたから痩せてるんだね。」

「いや、たいていは馬に乗っていたから歩いてはいない。」

「……あっそ…」

やがて、ハイキング並みに歩いた所で、ようやく母家らしき建物が姿を現した。
それは、サリーの想像力の限界を超えたものだった。



「な、なんだよ、レヴ!
あれ、お城じゃないか!」

「大昔はな…中はずいぶん変わっているぞ。」

サリー達は今まで見た事もない大きな城に度肝を抜かれてしまった。
呆然と立ち尽くす三人とレヴの姿に気付いたメイド達の動きがにわかに慌ただしくなる。



「レヴ様~~~!」

一人のメイドが大きな声を上げながら、レヴの所に駆け寄って来た。



「やぁ、カトリーヌ。
相変わらず元気そうだな。」

「なにを呑気なことを!
突然出ていかれて、こんなに長い間お戻りにならなかったのですから、私達はどれほど心配しましたことか…!」

「それはすまなかったな。
しかし、この通り、私は元気だ。
友人を連れてきた。
しばらく滞在するから、支度を頼む。」

「かしこまりました。」

レヴに向かって恭しく頭を下げたカトリーヌは、次にサリー達に目を向け、じろじろと凝視した後、屋敷の中へ駆け込んでいった。

レヴ達もゆっくりと屋敷へ向かう。



(…サリーさん、私達、こんな格好で来て良かったんでしょうか?)

(そんなこといったって、あたし、ドレスなんて…)

(サリーさん!レヴさんが買って下さったあれがあるじゃないですか!)

(でも、あたしだけ着たってどうにもならないよ。
第一、今更どこで着替えるっていうんだい。)

(そうですね、困りましたね…)

三人がそんなひそひそ話をしているうちに、母家の大きな扉が開け放たれた。

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