緑と石の物語
ほどなくして、その別荘らしきのが皆の目に映った。



「……やっぱりね……」

「なにがだ?」

「……いや、なんでもないよ。」

別荘にも常駐のメイドがおり、室内も庭もとても美しく保たれていた。

大きな窓のある食卓でその晩の夕食が始まった。
湖面を渡って来た風が涼やかで、遠くからは梟らしき鳴き声が聞こえている。



「ここも、すごく良い所だねぇ…
ねぇ、レヴ!
旅が終わったら、あたしをここのメイドに雇っておくれよ。」

「それには、もっと掃除や料理がうまくなってからだな。」

「あぁ、どうせ、あたしは掃除なんて昔から全然やらなかったよ!」

「まぁ、サリーさん!
メイドだなんておっしゃらずに、レヴの奥さんになって下されば良いのに…!」

サリーは飲んでいた思わずワインを吹き出した。



「じ、冗談じゃないよ!
こんな偏屈の嫁さんなんて、無理言わないでよ!」

「母上、こんな娘を嫁にもらったら、酒蔵の酒は一年も経たないうちになくなってしまいますよ。
しかも、こんな無作法な…」

「良いじゃないの、お酒くらい。
こんな方が来て下さったら、毎日面白いじゃないの。」

「本当だな。
我が家も賑やかになりそうだな。」

「父上まで、何を馬鹿なことを…」

まさか本心ではないとは思いつつ、珍しく鼓動の速くなるサリーだった。







やがて、次の朝、一行はフレデリックの新居に向けて出発した。



「ここからは近いのですか?」

「多分、夕方あたりには着くのではないかと思う。
私も初めて行く所なのでよくは知らないのだが…」

「見ず知らずの私達までがお邪魔して、本当によろしいのですか?」

「えぇ、フレデリックと私は兄弟のようなものですから、そんなお気遣いは無用ですよ。」

「そうなんですか。
安心しましたわ。」

「きっと、ジネットさんも彼等とは良い友人になれると思いますよ。」

「それは楽しみです。」

三人の会話にサリーだけが参加をせずに下を向いていた。
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