緑と石の物語
美しく結い上げられた髪に新調したドレス…
そして、二人にとっての初めての化粧…

部屋に入ってきた二人を見て、レヴもヴェール息を飲んだ。



「とても素敵ですよ、ジネットさん…
今夜はダンスのお相手を希望する男性が絶えないことでしょう…」

「まぁ…レヴさんったら…」

ヴェールは、まるで別人のように美しくなったジネットに圧倒され、言葉が出ない。



「…君も…そうして黙っていれば、淑女に見えるぞ。」

「無理しなくていいよ!
どうせ、あたしはジネットみたいに綺麗じゃないさ。」

「いや…とても綺麗だ…」

「う…嘘ばっかり…!!」

「本当ですよ!サリーさん!
とても素敵ですよ…」

「……うっ……」

突然泣き出すサリーに、メイドが慌ててハンカチで涙を拭うが、サリーの涙は止まらない。
メイドもついには諦め顔だ。
レヴ達もどうして良いかわからずに途方に暮れていた。
しばらくしてやっと泣きやんだサリーは、また化粧をやり直してもらうため、部屋に戻っていった。



「サリー様…なにか、気に入らないことでもございましたか?」

「違うよ…
あたし…誉められたことなんてめったになかったから…
綺麗だなんて言ってもらったことなんて、なかったから…それで…」

「…そうでございましたか…
でも、そんなに泣いたら綺麗なお顔が台無しですよ!
さ、もう一度、綺麗に致しましょう!
さっきより、もっと綺麗に!」

「……うん!ありがとう!」

メイドはサリーの肩を抱き、部屋へ連れて戻った。



やがて、夜になり、フレデリック邸に人々が集まり始めた。

(さすがに、皆、お上品な方ばかりですね。
私、やっぱり来なければ良かった…
あんな方々とお話なんて出来そうにありません。)

(それは、私も同じです。
場違いでいたたまれない気持ちです。)
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