緑と石の物語
「えっ!
もしかして、これはリーズさんが作られたんですか?」

驚くジネットに、リーズは照れたような笑みを返した。



「おかしいでしょう?
私、料理が趣味なんですよ。」

「まぁ…てっきりメイドさんが作られたのかと思ってましたわ…」

やがて、湖のほとりで昼食の準備が整った。



「すごいご馳走だね。」

「皆さん、これはすべてリーズさんが作られたそうですよ!」

「えっ!これをリーズさんが…?」

「…お口に合うかどうかわかりませんが…」

リーズは小さな声でそう言うと、そのまま深く俯いた。



「とてもおいしいですよ!」

「本当!おいしいですわ。」

「……まぁまぁだね。」

「リーズさん、とてもおいしいですよ。」

レヴがそう言うと、今まで俯いていたリーズが急に顔を上げた。



「レヴ様、本当ですか!?
嬉しいです。
私…こんなことしか取り柄がなくて…」

「料理がうまいことは素晴らしいことだと思いますよ。」

「レヴ様…」

「こんなもんなら、あたしだって出来るんだけどなぁ…」

「そうか…じゃあ、今度はサリーに作ってもらおうか…」

「あ…あぁ、良いよ!
いつでも作ってやるよ!」

その後も、リーズはあちらこちらを案内した。
気持ちの良い森やハーブ畑にはジネットやヴェールも顔をほこらばせていた。
ただ一人、サリーだけがなんとなく不機嫌な顔を浮かべていた。



「なぁ~んかぱっとしないね。
こんな所、今までさんざん旅をして来たじゃないか。」

「ごめんなさいね、サリーさん。
このあたりは目をひくようなものは何もないんです。
でも、自然がいっぱいで私は気にいってるんですよ。」

「ええ…私もとっても素敵な所だと思いますよ。
こんな所で暮らしていたら、穏やかな気持ちになれますね。」

「レヴさんのおっしゃる通りです。
さっきの森は本当に落ちつく場所ですね。」

「あんたらはよっぽどいなかが好きなんだね。
あたし、もう疲れたよ…
おなかも減ったし早く帰ってゆっくりしたいよ。」

「そうか…もう陽も暮れてきたことだし、そろそろ帰ることにするか…」

馬車に乗り込み、一行はフレデリックの屋敷へ戻った。



「リーズさん、今日は本当にどうもありがとうございました。」

「いえ…こちらこそ、皆様と楽しい一日を過ごす事が出来て感謝してます。」

「では…お気を付けて…」

「はい……あ…あの…レヴ様…
こちらにはいつまでいらっしゃるのですか?」

「そうですね…
特に決めてはいないのですが、あと数日はいるかと思いますが…」

「……数日……そうですか…
……では…失礼します。」
< 70 / 199 >

この作品をシェア

pagetop