緑と石の物語




「ねぇ、レヴ…
おじさんやおばさんはまだ帰って来ないのかい?」

「あぁ、彼等は多分、知り合いの家からそのまま家の方に帰ると思うのだが…」

「あたし達はいつまでここにいるのさ?」

「まだ、特には決めてはいない…」

「あんまり長居しちゃ悪いんじゃないかい?
フレデリックも忙しいみたいだし…だいたい、新婚なんだろ?
邪魔しちゃ悪いじゃないか。」

「私とフレデリックは兄弟も同様なのだ。
特に気にすることはないのではないか…?」

「本当にあんたは気が利かないんだから!
ローラとあんたは昔好い仲だったんだろ?
そんな相手がいたら、いくら兄弟同様だってやっぱり複雑な気分になるもんだよ。
いや、却ってそんなに親しいからこそ気になるってこともあるよ。
フレデリックだけじゃなく、ローラもね。」

「……私は特に何も感じてはいないが…そういうものなのか?」

「そうだよ!
普通は気になるもんなんだよ。
だから、早めに帰った方が良いよ。
それにさ、あたし、なんだかまた旅に出たくなってきてさ…」

「こういう生活はつまらないのか?」

「…そういうわけじゃないけどさ…
やっぱり、自分とはかけ離れた生活だから、落ち着かないんだね、きっと…
ヴェールやジネットも同じ気持ちだと思うよ。」

「そうか…
それなら、なるべく近いうちに帰ることにしよう。」

サリーは、レヴのその言葉に安堵した。
なぜ、自分がこんなにもここから離れたがっているのか…
それは、きっとリーズのせいだ。
あの女はどうも気に食わない…
なぜ…?
そういえば、ジネットとも最初はなかなかうまくいかなかった。
どうもジネットを見ているとイライラしてあたってしまった。
それは、自分にコンプレックスがあるからなのか?
いや、特別自分の容姿にコンプレックスがあるわけではなかったが、たまたまジネットもリーズも自分より綺麗だということがしゃくに触るのだろう…
そうだ、きっとそうなんだ…

サリーはそんなことを考えながら、窓ガラスに写る自分の顔をじっとみつめた。


(……うん。そんなに悪くない。
あたしだってもう少しおしゃれをして女らしくすれば…)



「…どうかしたのか?」

後ろからレヴに声をかけられ、サリーはハッとする。
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