緑と石の物語
次の朝、レヴはフレデリックに家に帰ることを切り出した。

「何を言ってるんだ。
まだ来たばかりじゃないか。
何か急用でもあるのか?」

「いや、そういうわけではないのだが…
君も忙しそうだと思ってな。」

「ここは退屈なのか?」

「いや、そういうことではないのだ。」

「なら、もう少しいたまえ。
週末には久しぶりに馬で出掛けようじゃないか?」

「馬か…それは良いな。
そうだ、ヴェール!
ここに来たら乗馬を教えようと言ってたのだったな。
すっかり忘れていた…
早速、今日から始めよう!」

「それは嬉しいです。
ぜひ、よろしくお願いします。」

すぐに帰ると言っていたくせに、それを忘れて馬に夢中になっているレヴを見て、サリーは小さな溜め息をついた。
この分では、間違いなく週末にはまではここにいることになるだろう…と。



「ねぇ、フレデリック。
あんた、酒は飲まないのかい?」

「少しなら飲みますよ。」

「少しかぁ…」

「サリーさん、お酒がお好きなんですか?」

「好きなんてもんじゃないぞ。
うかつに『好きなだけ飲んで良い』なんていったら、この国中の酒を飲まれてしまうぞ。」

「まぁ、そんなに?
…それなら、うちの葡萄畑へご案内しますわ。」

「葡萄畑?」

「ええ、レヴさんの所のものとは比べ物になりませんが、この近くに小さな葡萄畑を持ってるんです。
ワインもたくさんありますから、ぜひ飲んでみて下さいな。」

ローラの提案のお陰でサリーの機嫌も少し良くなった。

その日から、ヴェールはレヴに乗馬を習い、ジネットとサリーはローラについてワイン畑へ向かった。
サリーは、美味しいワインに酔いしれ、ジネットは葡萄畑を散策したり、ローラとおしゃべりをしながら楽しい時間を過ごしていた。
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