緑と石の物語
「あぁ~!よく寝た!」

サリーが目を覚ましたのは別荘が近付いてきた頃だった。



「…あれ?…レヴは?」

「レヴさんはリーズさんの馬車に…」

「えっ?!」

サリーの顔色が急に変わった。



「あ…サリーさん、おなかすいてませんか?」

ヴェールが、サリーに包みを手渡した。



「もしかして、これ…」

「ええ…リーズさんが作ってきて下さったものですよ!」

「……なんだい!こんなもん!!」

サリーは馬車の窓を開けると、包みを勢いよく投げ捨てた。



「サリーさん!なんてことを…!」

「ひどいよ…なんで起こしてくれなかったんだよ…」

「それはレヴさんがサリーさんの身体を気遣って…」

「そんなことあるもんか!あたしがいない方が良かったんだろ!」

「それは違いますよ。
レヴさんは最初からサリーさんが起きた時に食べるものを選んで、取っておかれたんですよ…」

「え……?」

「そうですよ…サリーさんの好きなものばかりを選んで下さってたんですよ。」

「でも…レヴはリーズと二人っきりで…」

「サリーさん、それは違いますよ。
リーズさんにはエリサさんというメイドさんがついてこられてて…
サリーさんが横になられたから座る場所がなくなって、それで、あちらの馬車に乗られたんですよ。」

「…………」

事情を聞いて、頭に血が上っていたサリーもようやく落ち着きを取り戻した。



「そうか…あたしが横になったから、レヴはこっちに乗れなかったんだね…」

まるで自分自身に言い聞かせるように、サリーは沈んだ声でそうつぶやいた。



……やがて、馬車は別荘に着いた。

「レヴ~~!」

「サリー…やっと起きたのか…」

「サリーさん、こんばんは。
これからいろいろとよろしくおねがいしますね。」

「レヴ、さっきは悪かったね。
私が寝ちゃったから、そっちの馬車に移動してもらって…」

「……いや、そんなことは構わんが…」

サリーはリーズのことを一瞥しただけで知らん顔をした。
傍目で見ていたヴェールとジネットは気が気ではなかったが、うまく何かを言うことが出来ず、ただ黙って成り行きを見ていた。
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