緑と石の物語

想い出作り

「まぁ…なんて綺麗な湖なのかしら？」

「本当に美しい湖ですね！
とても深い青い色をして…」

馬車の窓から見える湖に、リーズは心奪われていた。



（…本当に綺麗な色…
まるで、レヴ様の瞳みたい…）



やがて、馬車はゆっくりとレヴの屋敷の前に着いた。



「……まぁ…」

馬車を降りたリーズはレヴの屋敷の前で言葉を失った。

自分の家も貴族の端くれではあったが、レヴの家とは思っていた以上に格差があることを痛感した。

フレデリックの屋敷も自分の家よりずっと大きかったが、ここはもう規模が違う。
比べられるような対象ではなかった。



（……どうしよう…
こんな大きなお屋敷だったなんて…
レヴ様のご両親にはなんてご挨拶したら良いのかしら…？！）

リーズが焦る気持ちを押さえきらないでいる間に、玄関の扉が開いた。

中にはずらりと使用人達が並び、リーズ達を出迎えた。
その奥から現れたのは、優しい微笑みをたたえた年配の男女…



（この方達がレヴ様のご両親かしら？）



「おやおや、今回はまた新しいお友達を連れて来てくれたのだな。」

「ええ、こちらはリーズさん。
フレデリックの友人のヨハンさんの妹さんなのです。」

「そうですか！リーズさん、こんな所までよく来て下さいましたね。」

「まぁ、可愛らしいお嬢さんだこと！」

「あ…あ…あの…リーズです。
この度はお世話になります。」

うつ向き加減にそれだけ言うのが、リーズには精一杯だった。



「おじさん、おばさん、ひどいよ～！
こないだは勝手に帰っちゃうんだもん。」

「サリーさん、ごめんなさいね。
でも、またお会い出来て嬉しいわ！
また面白いお話をたくさん聞かせてちょうだいね！」

「あぁ！レヴと旅をしてる間の話はまだまだたくさんあるからね！
おじさん、あたし、おなか減ってるんだ！
今夜の夕食は早めにしておくれよ！」

「はいはい、わかりましたよ。
シェフに伝えておきますね。
おいしいお酒も準備しときますからね！」

「さすが、おじさん！わかってるね～！！」