緑と石の物語
昼前から、サリーはレヴの両親と一緒に町へ買い物に出掛けた。

ヴェールは、本の続きを読みたいとまた部屋に引き込もっていた。



「ジネットさん、リーズさん、湖を見に行きませんか?」

「それは良いですね!リーズさん、ぜひ連れていっていただきましょう!」

リーズは黙ってうなずいた。



「散歩がてら歩きましょうか…」

三人はゆっくりと庭を歩いていく。



「あ…!!」

「どうかしましたか?」

「あ…すみません。
私、今頃、気が付いたんです。
ここはレヴ様のお屋敷の敷地内だったんですね。」

「リーズさんったら、面白いことを…
でも、こんなに広いとここがお庭だってことを忘れてしまいますわよね。」

三人は微笑みを交わした。
優しい風と太陽の光が心地良い。



「ところで、ジネットさんもレヴ様の昔からのお友達なんですか?」

「いえ…私は皆さんのご好意で旅に同行させていただいてるんだけなんです。」

「ジネットさんとは旅先で知り合ったんですよ。
サリーが旅先で具合いが悪くなった時に助けていただいたんです。」

「そうだったんですか…
では、なぜ、一緒に旅をすることに?」

「それは…ですね…」

ジネットは、どのように話そうかと一瞬戸惑い、口籠る。



「ジネットさんは人を探していらっしゃるのです。
生き別れになった大切な方を…」

「……ええ、そうなんです。
私は旅慣れていないので一人旅は心細くて…それで、皆さんに同行させていただくことにしたんです。」

「そうだったんですか!
私、てっきり、ヴェールさんがジネットさんの恋人なのかと思ってました。」

「まさか…!!違いますわ!」

レヴは、ジネットのその言葉を聞いて、やはりヴェールには脈はないと感じた。
ジネットは、どういう事情かはわからないが、別れ別れになった男性のことを一途に愛しているのだ…と。
誰もその男性の代わりにはなれないのだろうと感じていた。

それが、まるで的はずれの推測だとも気付かずに…

レヴの離れの裏手の小径を少し進むと、青い湖がよく見えた。



「まぁ…」

「ここからの眺めも良いですが、離れの二階からだともっとよく見渡せますよ。」

レヴは二人を離れに案内した。



「ふだん、私はこちらにいる事が多いんですよ。」

大きな窓を開け放つと、湖を渡る風たちが遠慮なく入ってくる。



「素敵な眺めですね…!」

寄り添うように並ぶレヴとリーズは本当に絵になる。



(…私とヴェールさんも、リーズさんの目にはあんな風に見えたのかしら?
それは私の想いのせい…?
…決して届くことのない想いなのに…)



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