緑と石の物語
「…わかってたんです、最初から私に望みなんてないってことは。
でも、せめて一時でもレヴ様のおそばで過ごせたらと思って…
だけど、レヴ様に好きな方がいらっしゃるとわかったら…私…やっぱり耐えられなくなってしまって…」

「リーズさん、そんなことないのよ。
それはあなたの誤解だわ…」

「いえ、私にはわかります。
レヴ様はサリーさんのことがお好きなんだわ。
でなければ、あんなにサリーさんのことをかばわれるわけがないわ。」

「いえ、違うの!
あなたは勘違いをしているのよ。」

「勘違いなんかじゃありません!」

「…困ったわね…
リーズさん、私が今から言う話を誰にも言わないと約束出来る?」

「なんのことですか?
私は元々友達もあまりいませんし、約束は必ず守りますが…」

「実はね…サリーさんとレヴさんはご兄妹なの。」

「えっ!?ま、まさか!」

リーズは目を丸くしてジネットをみつめた。



「私も最初は驚いたんだけど、なにかご事情があるらしく別れて育って来られたらしいのよ。
だから、レヴさんがサリーさんのことをかばわれるのは兄としての感情で、恋愛感情ではないのよ。
今まで一緒に旅をしてきたけど、レヴさんは特に心に決めた方はいらっしゃらないようだわ。」

「そ…そうだったんですか!
…あ…私ったら、昨日の今日でまた泣いてしまって…
しかも、急に飛び出したりして…
あぁ……今度こそ、おかしな奴だと思われたはずだわ。
ジネットさん、どうしましょう?!」

「白百合の話からまた泣いてしまったんですね?
仕方ないわね…私にまかせておいて。
さぁ、レヴさんの所に行きましょう!」

「本当に大丈夫かしら…」

「ええ、大丈夫よ!」

心配そうなリーズとは裏腹にジネットは自信を持って歩いていく。

遠くに母家が見えて来た時のことだった。



「リーズさん!!」

走ってきたレヴはリーズを強く抱き締めた。



「レ…レヴ様…」

「良かった…ご無事で…」

「……レヴ様…ごめんなさい…!」

レヴが、こんなにも自分のことを心配してくれていることに、リーズは感動してまた泣き出した。



「どうぞ…」

レヴはリーズの前に、そっとハンカチを差し出した。



「あ…ありがとうございます…
昨夜のハンカチも、まだお返ししてませんでしたね…」

「構いませんよ…ハンカチならいくらでもありますから…」

微笑むレヴに、リーズもつられて小さく微笑んだ。


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