緑と石の物語
その晩は、買い物の話をして上機嫌なサリーだったが、レヴの一言でその態度は一変した。



「ひどいじゃないか!
あたしはまだ連れて行ってもらったことないのに…」

「君は今日はでかけていたではないか。
だから、ジネットさんとリーズさんをお誘いしただけだ。
何も問題はないと思うが…」

「今日じゃなくて今までだって、一度も誘ってくれなかったじゃないか。」

「君も見たいとは言わなかった。」

レヴとサリーの間に、険悪な空気が流れる。



「まぁまぁ…
そんなつまらないことで、言い争わなくても良いじゃないか。
サリーさん、そんなに湖が見たいのなら、明日、レヴに連れていってもらいなさい。」

「おじさん!今日のことだけじゃないんだ。
レヴはいつもあたしの言うことなんてちっとも聞いてくれないんだよ。
ジネットやリーズには優しいけど、あたしには全然違うんだ。」



(サリーさん…
あんなにムキになって…
でも、私にも覚えがあるわ。
昔、兄さんが初めてガールフレンドのマルゴさんを連れてきた時、私、なんだかとてもいやな気分になってしまって…
なんとなくツンケンした態度を取ってしまったわ。
別に、マルゴさんが悪いわけじゃないのに、なぜだかイライラしてしまって…
…サリーさんもきっとそんなお気持ちなのね…)



「サリーさん、とっても綺麗な湖でしたよ。
レヴ様、明日はぜひサリーさんに湖を見せてあげて下さいね!」

「え…?
まぁ、サリーが見たいというのなら、私は別に構いませんが…」

「あ、そうだわ!
サリーさん!私、お菓子を作りますから、明日、レヴ様とご一緒に食べて下さいね!
サリーさんは何のお菓子がお好きかしら?」

「え…っ?
あ、あたしはまぁなんでも好きだけどさ。」

「リーズさんもご一緒にいかがですか?」

「いえ、私は今日連れていっていただきましたから、明日はサリーさんとお二人でどうぞ!」

サリーが怪訝な顔でリーズをみつめた。







次の朝、サリーの部屋をリーズが訪ねた。

「リーズ…なんだい、こんな朝早くから…」

「サリーさん、おはようございます。
あの…これ、昨夜お約束したお菓子です。
たくさん召しあがって下さいね!」

そう言うと、リーズは大きなバスケットをサリーに手渡し戻っていった。



バスケットの蓋をあけると、甘い香りが鼻をくすぐった。

「……こいつはすごいね…」
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