〜その唇は嘘をつく〜
触れる唇
翌朝
いつもより早く目覚め、なぜか私は浮かれているみたい。
だって、朝ごはんもそこそこで普段より念入りにメークして髪型だって仕事に差し支え無い程度にセミロングの毛先を緩めにカールさせ、服だって昨日の夜から悩んで可愛く見えるようにコーディネートした。
出来上がった自分を姿見の前で披露しておかしなところがないかチェックしている。
私、どうしたんだろう⁈
デートでもないのに気合入りすぎかなぁ⁈
やっぱり、服だけでも通勤風にしたほうがいいかなぁ…
でも、やっぱりあっちの服のほうが可愛く見えるよね。
なんて考えながら朝の忙しい時間帯に服を着たり脱いだりと鏡の前でファッションショー。
「柚月、悠くんお迎えに来てるわよ」
えっ…もう⁈
時計を見れば7時25分
やばい
鏡の中の私を見れば、白い七分袖のシフォンで袖がシースルーになっているブラウスをインして紺のフレアスカート。
これに、通勤用に新しく買ったピンクベージュの鞄とパンプスを履いてオッケーと鏡の前で回る。
色合いも落ち着いてるし、張り切った感はないよね。
よしと気合いを入れて玄関へ向かう。
玄関先で待ってくれていた悠は階段を下りる音に気づき振り向いた。
一瞬の沈黙
マジマジと上から足先まで見られ
「…かわいいじゃん………」
口角を上げ満足気に笑う悠。
顔が熱くなっているのを感じながらも
「こんなの普通だもん」
ちょっと口を尖らせてみる。
「ふーん、普通ね…」
といいながらもう一度上から下まで見ると
「行くぞ」
ぶっきらぼうに言うと玄関を出て行ってしまった。
私は、慌ててパンプスを履いて、キッチンかリビングにいるであろう母に向かって
「行ってきまーす」
玄関のドアを閉め、悠の車の助手席に乗り込む。
「お待たせ」
「おっせーよ」
なぜかご機嫌斜めの悠は車を走らせる。
「待たせたのは悪いけど…まだ、時間あるじゃん」
待たせたって言ったてたったの数分なのになぜ怒る⁈
「俺は、駅に早めについて缶コーヒーを飲みながら一服するのが日課なんだ。その時間なかったらお前のせいだぞ」
「そんな日課知らないわよ。だいいち、電車通勤なんてつい最近じゃん。そんなの日課って言わないと思うけど…」
ギロッと睨まれ言葉が小さくなり、最後の言葉まで言えなかった。
「……」
「もう、わかったわよ。お詫びにその缶コーヒー買いに私が行かせて頂きます。それでよろしいですか⁇」