〜その唇は嘘をつく〜

土曜日


カーテンの隙間から外を見るとちょうどスーツを着た悠が家から出てきてこちらを見ると目が合い笑ったように見えあわててカーテンを閉めた。

けど…すぐに気になってほんのちょっとだけの隙間から悠を捜すとタバコに火をつけバス停に向かって歩いて行く後ろ姿だった。

「そっか…

悠は、今日も仕事なんだ。

車は⁈

駅に置いてきたから駅までバスに乗るんだ。

そっか…今日が土曜日でよかった。

明日はおばさん達が帰ってくるし今日の夕飯の時間さえやり過ごせば、月曜まで悠に合わなくてすむんだ」

寝不足で考えがまとまらないからか疑問に、たんたんとした口調で独り言をつぶやいていた。

モヤモヤとする気持ちを打ち消すように

「はぁ〜」

と大きなため息を吐いて布団にもぐると
すぐに睡魔がおそってきて眠りについてしまっていた。




また、この間の夢を見ている。

夢の中で悠と手を繋ぎ、嬉しそうに悠からもらったネックレスのオモチャを首からぶら下げ微笑んでいる。

『いつか絶対に本物の石のついたネックレスをゆずにあげる。その時は、僕のお嫁さんになってね』

鮮明に浮かぶ夢の中で小さな私は

『うん…ゆうちゃんのおよめさんになるからぜったいちょうだいね』

『約束だよ』

小指をお互いに出しゆびきりをしている。
『ゆびきりげんまん、ウソついたら…なんだっけ⁇』

『ウソついたら…針千本の〜ます‥だよ』

『やだ…はりせんぼんのめないよ』

半泣きの小さな私。

『大丈夫だよ。ゆずが破らなければいいだけ…もし、破っても飲まなくていいよ。その代わりに僕の言うこと聞いてもらうから』

『うん…それならいいよ。でも、ゆうちゃんがやくそくやぶったらのむの⁇』

『僕はやぶらないから飲む必要はないと思うよ』

『そっか…よかった』

『うん⁈どうしてよかったなの?』

『はりのんだらゆうちゃんしんじゃうもん。そんなのやだ…だから、ぜったいおよめさんにしてね』

私よりも背の高い悠ちゃんが少し屈んで

『うん…もちろんだよ……』

屈んでいる悠ちゃんの唇にチュッと小さな私はキスをする。

はにかんで

『ゆうちゃん、だいすき』



ガバっと起き上がり目が覚めた。

思い出した…

私、悠と結婚の約束してたんだ。

悠は、ずっと覚えていたの⁈

このネックレスって……

そういうことなの⁈

思い出せってこれのこと⁈

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