〜その唇は嘘をつく〜

あわてて布団から出ると、押入れから正方形のお菓子の缶を取り出した。

ところどころ錆びついているけど…小さな頃の宝箱

蓋をはぐると今となっては懐かしい物ばかりだった。

縄跳びのひも

ビー玉

たくさん入ったビーズの小箱

お気に入りだったリボン

かわいい花のついたヘアゴム

それから…だいすきだったゲームソフト

あれ…⁇

ない。

ないよ……

どうして⁈

古い記憶を辿っても思い出せない。

気にいってたから捨てるはずないし、どこ、どこいったの⁈

押入れの中を引っ掻き回したけど…出てこない。

焦るとよけいテンパって思い出せない。

あれ⁇

どこ⁇

鏡台の引き出しを開けても出てこない。

思い当たる場所を探したけど…結局わからずじまいだった。

あっ…

お母さんなら知ってるかな⁇

階段を下りリビングへ行くと

「あら‥やっと起きてきたわね」

「…」

ソファの上で新聞を広げこちらを見る人

「お父さん…おはよう」

沈黙が気まずい。

「…おはよう。……休みだからといってお昼過ぎに起きてくるのは感心しないぞ」

「はい…すみません」

視線をそらし、ダイニングテーブルの椅子に座る。

小学生の教頭先生をしているお父さんは、朝が誰より早く帰りも1番遅くまで残っている。

だから…こうやって顔をあわせることの方が珍しいぐらいだ。

能天気な母と違って時間や規則に厳しく
、反抗期を迎えた時期から苦手。

テーブルの上に朝食兼昼食のオムライス

げっ…

起きたばかりなのに、きつい。

でも、お父さんがいるから文句も言わずオムライスを食べ始めた。

「あっ…」

そうだった。

「なに⁇美味しくなかった⁈」

「ううん…美味しいよ。あのさ…私が小さい時にいつも首から下げていたオモチャのネックレス、探しても見つからないんだよね。お母さん、知らないよね⁈」

「あぁ…あれ‼︎ 知らないわよ。ゆずの宝箱に入ってるんじゃないの⁈」

「ないんだ…」

「そう…でも、どうして今さら気になるの⁇」

「えっ…ちょっと思い出したから久しぶりに見て見ようと思って……」

「お父さん、知らないわよね」

「……いつだったか…泣きながら悠くんに投げつけてたアレか?」

「あぁ…そんなことあったわね」

「えっ…私、記憶にないよ」

「ほら、悠くんに彼女ができたとかで大泣きしたじゃない」
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