〜その唇は嘘をつく〜

はぁ〜

あんたは、どこのおばちゃん。

「さぁ、行くわよ」

今日何度目かのセリフを吐いてショッピングモールを出た。

外は、6時を回ると薄暗くなる。

そんな時刻から楓と向かった先は…

私と悠が乗り降りする駅で降り

「悠さんの仕事先ってどこ?」

「えっと…大通りにある自動車ディーラーのどれか…外車だと思うけど」

「なに⁈その中途半端な情報。まぁ、いいわ…大通りに出るわよ」

「何しに行くの?」

「いいから…」

早歩きで歩く楓の後についていくので一杯一杯だ。

いったい何を考えているのやら⁈

大通りに出ると、いくつかある自動車ディーラーの建物、オシャレなレストラン、カフェ、コンビニなどその他たくさんのお店がひしめき合っている中、外車ディーラーはひとつ。

「……たぶんあれね」

目指す場所を見つけ今度はゆっくりと歩みを進めた私達。

「ねぇ…なにする気⁈」

「何もしないわよ。ただ、お店の前を通るだけだけど…柚月は気にしないで歩いていること」

人差し指を立て、わかった⁈と念押しされ楓の迫力にただ頷いた。

「ところで、御飯どうする?」

「……えっ…どうしようか?」

話が変わったと同時に恐い顔から笑顔に変わり、楓の変化についていけない。

「パスタもいいし…肌寒いからドリアもいいわね」

「それなら…駅前のファミレスにする⁈」

「うーん、うちら2人ならそこでもいいけど。でも、引っかかるなら…」

顎に指を当て考えている楓

引っかかるってなに⁇

大きなウインドウの向こうからコンコンと音がした。

立ち止まり音のする方を見れば細身のスーツをカッコよく着こなす悠が顔の横で手を振っている。

ふふふ‥やっぱりね

と楓が、小さく聞こえるか聞こえない声でつぶやいた。

何が⁈やっぱりなの⁇

今日、何度疑問に思ったことか…

もう、口に出すのも面倒臭い。

どうせ、話をそらされて終わりなんだもの。

「2人で、どこ行くんだ?」

目の前に現れた悠が、スラックスのポケットに片手を入れ笑顔で近づいてくる。

「こんばんは…」

楓はいちばんの笑顔を作りかわいく悠に挨拶をすると

「やぁ…楓ちゃんだっけ⁈この間は残念だったよ。楽しみにしてたのになぁ…」

もう…私に対する態度と違い優しいよそ行きの態度にイラっとする。

「そうですか?…それじゃ、お邪魔虫してしまえばよかったですね」
< 34 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop