〜その唇は嘘をつく〜
はぁ〜
あんたは、どこのおばちゃん。
「さぁ、行くわよ」
今日何度目かのセリフを吐いてショッピングモールを出た。
外は、6時を回ると薄暗くなる。
そんな時刻から楓と向かった先は…
私と悠が乗り降りする駅で降り
「悠さんの仕事先ってどこ?」
「えっと…大通りにある自動車ディーラーのどれか…外車だと思うけど」
「なに⁈その中途半端な情報。まぁ、いいわ…大通りに出るわよ」
「何しに行くの?」
「いいから…」
早歩きで歩く楓の後についていくので一杯一杯だ。
いったい何を考えているのやら⁈
大通りに出ると、いくつかある自動車ディーラーの建物、オシャレなレストラン、カフェ、コンビニなどその他たくさんのお店がひしめき合っている中、外車ディーラーはひとつ。
「……たぶんあれね」
目指す場所を見つけ今度はゆっくりと歩みを進めた私達。
「ねぇ…なにする気⁈」
「何もしないわよ。ただ、お店の前を通るだけだけど…柚月は気にしないで歩いていること」
人差し指を立て、わかった⁈と念押しされ楓の迫力にただ頷いた。
「ところで、御飯どうする?」
「……えっ…どうしようか?」
話が変わったと同時に恐い顔から笑顔に変わり、楓の変化についていけない。
「パスタもいいし…肌寒いからドリアもいいわね」
「それなら…駅前のファミレスにする⁈」
「うーん、うちら2人ならそこでもいいけど。でも、引っかかるなら…」
顎に指を当て考えている楓
引っかかるってなに⁇
大きなウインドウの向こうからコンコンと音がした。
立ち止まり音のする方を見れば細身のスーツをカッコよく着こなす悠が顔の横で手を振っている。
ふふふ‥やっぱりね
と楓が、小さく聞こえるか聞こえない声でつぶやいた。
何が⁈やっぱりなの⁇
今日、何度疑問に思ったことか…
もう、口に出すのも面倒臭い。
どうせ、話をそらされて終わりなんだもの。
「2人で、どこ行くんだ?」
目の前に現れた悠が、スラックスのポケットに片手を入れ笑顔で近づいてくる。
「こんばんは…」
楓はいちばんの笑顔を作りかわいく悠に挨拶をすると
「やぁ…楓ちゃんだっけ⁈この間は残念だったよ。楽しみにしてたのになぁ…」
もう…私に対する態度と違い優しいよそ行きの態度にイラっとする。
「そうですか?…それじゃ、お邪魔虫してしまえばよかったですね」