〜その唇は嘘をつく〜
意地悪く笑う楓に苦笑する悠。
「もう…悠、仕事中でしょう。私達、これから御飯食べに行くの。早く、戻りなよ」
案外、普通に話している自分に驚く。
きっと、悠がいつもと変わらずに話かけてきたからだ。
「そうか……それならこの間のお店、コンフォルトで待っててよ。あの人も連れて行くから合流しよう」
あいつと言って指指すウインドウの向こうから悠と違うタイプの茶髪のイケメンが手を振っていた。
微笑みながら手を振りかえす楓
「いいですよ」
「ちょっと…楓」
「いいじゃない。人数多い方が楽しいわよ…ねぇ、悠さん」
「楽しんでもらえるように頑張るよ」
「先に行って待ってますね。柚月、案内して…」
はぁ〜
もう、決定なのね。
「確か、こっちの方…『柚月』」
向きを変え歩き出した時、悠が呼び止める。
振り返ると背後に悠が立ち私の腕を引いた。
『今日のゆずき、かわいすぎ』
耳元で響く低い声に、ボッと顔が熱くなる。
そんな私を楽し気に見て、喉奥でクッククと笑いを噛み締めている悠。
照れ隠しなのか、からかわれてムカつくからなのか、私は手を振り払い
「悠の奢りだからね。楓、行くわよ」
鼻息荒く息巻くと悠に背を向け歩き出した。
悠が、悪巧みを思いついているなんて知らずにコンフォルトへ向かった。
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コンフォルト
前回と違うボックスタイプの席に楓と座った。
案内してくれた店員さんは、私のことを覚えていてくれて
「またのご来店ありがとうございます。今日は、綺麗なお友達とご一緒ですね。女性2人ならカウンターいかがですか?オーナーが目の前でカクテル作ってくれますよ」
そう言われて、楓もまんざらでもなさそうに微笑む。
「いえ、後で連れが2人組で来るんで今日はここで大丈夫です」
店員は、それ以上進めることもなく
「では、ご注文お決まりになったらお呼びください」
席を離れたのを確認して…
「楓さん…悠にあの一言を言わせる為にわざわざ下着や服を買ってメイクもしてもらったの⁈」
口調を変え、楓を問い詰める。
それなのに…
「なに言われたの?」
逆に問い詰められてしまう。
自分で言うのも恥ずかしすぎて口元でボソボソとつぶやいた。
「聞こえない」
もう…
「だから‥今日の私ってかわいすぎって言われた」
あははは‥…目に涙をためて笑う楓。
「……そんなことで真っ赤になってたの。てっきり、脱がせたいとか言われたと思ってたわ」
「そんなこと言ってたら叩いているわよ」
楓を睨みつけるけど…視線が私の後ろを見ている。