〜その唇は嘘をつく〜
クスッと笑う悠に手を引かれなんとかエレベーターを出ることができた。
鍵を開けた部屋の中は、玄関から直ぐのリビングにソファが1つだけあり、対面式キッチン。
リビングの奥にドアが1つとキッチンの向こう側にドアが1つ。
戸惑う私をソファに座るよう誘導して隣り合わせに座る。
「今までの部屋、そのまま残してあるんだ」
「どうして?」
「こうして、柚月を連れ込む為」
「えっ…」
驚く私の髪に指を絡め
「柚月…素直になれよ」
腕の中で視線を合わせ見つめ合う。
「なにを…⁈」
不機嫌丸出しで眉間にシワを寄せ眼つきの鋭くなる男にぎゅっと力強く抱きしめられ体が硬直する。
「お前は俺が好きなんだよ」
そんな私に甘い声で囁き、優しく頬を撫で始めるから愛されていると勘違いしてしまう。
好き
大好き
意地悪く私を子供扱いして女として見てくれなくても…
かまってくれればそれで良かったの…
そんなこと言われると勘違いしてしまうよ。
でも私は
「悠なんて好きじゃない。きらいよ」
と嘘をつく。
だって、認めるのが怖いから
このままでいい…と思うのに
「顔を真っ赤にして素直に認めないお前ってかわいいな」
意地悪く笑みを浮かべ、唇にキスを落とし抵抗しようともがくが頭部を体を押さえられ悠の腕の中で翻弄されていく。
悠の熱ぽい吐息に体の奥が疼く。
無意識に悠の首に腕を絡めキスに応えていく私。
スッーと離れていく唇が口角を上げて笑うから唇を噛み締めた。
「クックク……キスしてほしい⁈」
「ほしくない」
「この唇は嘘つきだね…新しい服にメイクも楓ちゃんの見立てだろう⁈着飾った姿を俺に見せて反応を確かめる為にわざわざあの時間に来たんだよね。かわいいことするなぁって喜んでいたのに…どうして素直じゃないのかなぁ⁈」
うっ…そんな企みがあったんだ。
楓、恐るべし。
「どうしたら好きって言ってくれるのかな…」
そう言いつつ、背中のファスナーをゆっくりとおろしていく。
ふわっと前が緩みデコルテが露わになるのを防ごうとする手を阻止され胸の膨らみが現れる。
「脱がせたくなるような服の下にこんなエロい下着を隠してたんだ…いったい誰に見せるつもりだったのかな⁈」
「そんな…」
胸の膨らみに痛いぐらいに吸いつく悠。
「…ッ」
「仕掛けてきたのは柚月なんだから‥覚悟して‥」