〜その唇は嘘をつく〜

結局、離れがたくて職場近くまで来てしまい、繋いだ手をなんとか離して帰りの待ち合わせの約束をして私は職場へ

しっかり、先生と麻里さんに見られていたらしく朝からからかわれっぱなし。

そこへ、北村さんも加わり白状する羽目に

「もう、からかわないでください」

「あら‥急展開なんだもの。朝からあんなに仲良しな姿みてたら聞きたくなるわ」

「私も、見たかったです」

「手を繋いで見つめあってね…『麻里さん』」

「あらあら、ゆずちゃんが怒っちゃたわ。うふふ‥明後日の歓送迎会でね」

麻里さんは、北村さんにウインクして朝一番の患者の名を呼んだ。

その後は、私語をつつしんで仕事に専念する私達。

ーーーー
ーー

今日も無事何事もなく診療が終われば、北村さんと一緒に駅に向かう。

「北村さんと、あと2日だなんて寂しいです。必ず、赤ちゃん生まれたら連絡ください。私、病院まで行きますからね」

「ふふふ、ありがとう」

「柚月」

「悠」

朝別れたばかりのに、名前を呼ばれると引き寄せられるように駆け寄っていた。

私の後ろを見て苦笑する悠。

振り向けば、いつの間にか北村さんの隣に旦那さんもいて2人でニヤついていた。

あははは…

笑ってごまかす。

2人に別れを告げ私の自宅に向かった。

電車の中でも、今、悠の車の中でも悠を尋問中

家に帰るだけなのに、スーツをビシッと着こなす悠に違和感を感じる。

それでも、『行けばわかるよ』なんて言って誤魔化す。

私だけ、蚊帳の外で面白くない。

チュッと音をワザとたて、ぶーたれる私をキス1つで軟化させる悠には、叶わない。

『もう』といいながら頬が緩む。

「さぁ、降りて…オヤジ達も待ってる」



おじさんやおばさんもいるの⁈

家の玄関を開ければ、楽しげな笑い声。

「ただいま」

「おかえり」

「お邪魔します」

あれ⁈

珍しい。

よそ行きの口調の悠。

「あら‥悠ちゃんたら緊張しちゃって」

おばさんが奥から出てきた。

「おばさん、こんばんは」

「あら‥ゆずちゃん、おばさんじゃないわよ」

「えっ…」

「お母さんって呼んでほしいわ」



「母さん…」

おばさんは、悠の威圧的な声に舌を出して肩をすぼめる。

「ほらほら…玄関先にいつまでもいないでリビングに行きましょう」

そこは既にお父さんとおじさんで宴会状態。
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