〜その唇は嘘をつく〜
俺が中学生になると変化が出てきた。
朝、夕方と部活の練習があるせいで柚月と会える時間が減ってきた。
そんな2人の関係にヒビが入り始める。
いつも一緒にいた俺が卒業すると、これ幸いと男子が柚月に近づき始めた。
女友達と遊ぶのは目をつぶろう。
だが、男子もまじり遊びに出かける。
そして…少なくなった2人きりの時間にもかかわらず、柚月は俺にどこで誰と何して遊んだかを事細かく喋り出す。
『今日ね、一弥君と瑛斗くん莉音ちゃんと4人でね………』
男の名前が出てきた時点で、笑顔だけを浮かべ俺の耳には入ってこない。
そんな話を聞きたい訳じゃないんだ。
『柚月は、毎日楽しそうだね』
『そんなことないよ。悠ちゃんと遊べなくて寂しいもん。でも、瑛斗くんが、中学生になると部活とか勉強で忙しいって‥…だから、ゆずね‥悠ちゃんの邪魔しちゃいけないって思って我慢しているんだよ』
なんていじらしいんだ。
『我慢しなくていいよ。隣なんだから会いたかったらいつでもおいで』
『いいの⁇』
笑顔でコクンと頷く俺だけど、頭の中では、余計な事を言って俺と柚月の時間を邪魔した瑛斗だっけ⁈そいつにムカついていた。
『瑛斗くんだっけ⁈今度、その男の子も一緒に連れておいて』
柚月は、俺のものだとそいつに思い知らせてやる。
そして、その日はすぐにやってきた。
『僕、悠さんが応援団長をしていた団にいたんですよ。ずっと、憧れてたんです。こうして会えて嬉しいな』
『あぁ、ありがとう』
『僕も、悠さんのように応援団長になるのが夢なんです』
あぁ
こいつは、俺に憧れて素直に俺の邪魔をしたらいけないって柚月に教えたんだ。
柚月、狙いじゃなくてホッとした。
『瑛斗くんなら大丈夫だよ。瑛斗くんの団長姿、かっこいいだろうなぁ〜』
俺の目の前で、他の男を褒めるのか⁈
平静を装う俺だけど無邪気な柚月にイラついた。
空気を読んだ瑛斗
『でも、柚月にとって1番かっこいいのは、悠さんだろう⁈』
『うん』
かわいい笑顔で頬を染める。
まったく、この子は…無邪気にも程がある。
無意識だろうがタチが悪い。
瑛斗も、柚月の笑顔にクギづけだ。
帰り際、瑛斗が耳打ちする。
『僕、悠さんの気持ちわかります。あんな無防備じゃ心配ですよね‥柚月に近づく奴いたら僕が排除します。だから、悠さんは、安心して勉強も部活も頑張ってください』