〜その唇は嘘をつく〜
柚月ならわかってくれる。
そう言う不確かな自信のせいで、もろく壊れてしまった。
その後、会いに行っても
『会いたくない』の一点張り。
待ち伏せすれば、無視を決め込む柚月。
言い訳すれば余計こじれる雰囲気に何も言えない。
また、柚月の口から『きらい』って言われたら立ち直れないぐらい、あのセリフは俺の心の奥に残っている。
そして…関係修復もできないまま、俺は高校生、柚月は中学生になった。
柚月の周りは相変わらず、瑛斗がガードしていて、ときたま瑛斗が近状報告しにやって来る。
『相変わらず、柚月はモテるけど…誰も告白しようとする奴はいないですよ。悠さんを怒らせたら怖いって有名ですからね』
中学に入り、山城先輩から悠さんに変わり、俺と瑛斗の絆は深くなった。
それは、柚月と俺の関係が壊れてしまったから余計なのかもしれない。
そんなある日
柚月と俺の関係を壊した元凶
杉本 美幸が再び、俺の前に現れた。
今度は、付き合ってくれなくていいからと関係を迫ってきた。
その頃の俺は愛しい女が隣りにいるのに会うこともままならず、カーテン越しに見えるシルエットが救いだった。
柚月は気づいてなかったのだろうが、着替える姿が映っていたんだ。
思春期の俺には、欲望を抱かせるに十分で柚月に触れることもできずモンモンとしていた。
だから、この女のせいでと憎悪を感じつつも、誘惑する身体には勝てず関係を持ってしまった。
俺の部屋で何度も柚月の代わりに抱いた。声を出すなと言っても、わざと声をあげる女。
だから、女の名前なんて1度も呼ばない。柚月の名を何度もつぶやく。
久しぶりに柚月の方から話かけてきて俺は嬉しいくせに素っ気ない態度をとってしまう。
『おじさん達がいない時に悠の部屋からきみ悪い声が聞こえてくるんだけど…
なんとかならない⁈』
チッ…聞こえいたのか。
『きみ悪い⁇いい声の間違いだろう⁈てか、毎回、隣で聞いてるなんて悪趣味だぞ』
バツが悪い。
『…はぁっ、毎回⁈…隣の部屋だし、たまに聞こえてくるんだからか仕方ないじゃない』
『…耳栓でもしてろ』
『なんで私が…隣に住んでる私の身にもなってよ。やるならよそでやってきて…』
『ガキのくせに…お前こそ、俺の身にもなれ』
俺の気も知らないで、そんなこと言うなよ。
『早く、大人になれ…』
『女誑しの悠ちゃんなんてきらいよ』
小さくつぶやく声