〜その唇は嘘をつく〜

欲望に負ける男


朝、約束通り迎えに行くとオシャレをした柚月が出てきた。

あまりの可愛さに息をのんで魅入って…素直な言葉が出る。

『…かわいいじゃん………』

『こんなの普通だもん』

照れている感じが、新鮮だ。
こんなやり取りができるなんて…
だけど…これが普通ね⁈

なんとなく気分が悪い。

だから、ちょっとだけ意地悪をしてしまう。

毎日の駅での日課を話題に出し柚月をからかう。
そんな日課なんてないけど…

車内は、打ち解けた感じで柚月の警戒心が完全になくなった。

これも、昨日の痴漢男のおかげかなぁ…

車を降り、柚月の友達楓を遠くに見つけた。

ふと、頭の中で過る計画。
柚月に缶コーヒーを買いに行かせ、楓に近寄る。

『楓ちゃん』

『あっ、悠さん。おはようございます』

『おはよう。今日もかわいいね』

『ふふふ、ありがとうございます。今日は、飲みに行くからはりきっちゃいました』

『うん…その事なんだけど、お願いがあるんだ…今日は、柚月と2人きりになりたいんだ。もちろん、この埋め合わせはするからどうかな?』

『柚月に本気なんですよね⁈』

『もちろん…他の奴にとられる前に短期決戦で行くつもりだから…』

『それなら協力します』

『ありがとう』

『お邪魔虫したくないので柚月に後で連絡しますね』

全て見透かした笑みで楓ちゃんは、改札に向かって歩いて行った。

ーーーーーー
ーーーー

そして…望み通り2人きり
ダイニングカフェ&バー
【コンフォルト】

『美味しい…悠、連れて来てくれてありがとう』

火照った頬で可愛く笑うから
つい…

唇に手を当て驚いている。

早急過ぎたか⁈

『そんなかわいいこと言うと男はバカだからすぐ勘違いする。俺以外の奴だったらこんなもんじゃ済まないよ』

後ろめたい気持ちをごまかすが、今だに柚月はKissさられた現実を受け入れられないようだ。

カウンター内にいる店員
いや、ここのオーナーが

『攻略‥難しそうだね』

鈍い柚月を見て楽しそうに笑っているから

『えぇ、必ず攻略しますけどね』

だが、柚月は何のことかわかってない様子だ。

俺を後押ししてくれるのか、マスターが俺からだと柚月にカクテルをプレゼントしてくれる。

アプリコットフィズ

花言葉は振り向いてください…か⁈

俺的には、『振り向かせる』なんだけどな…

ここまで鈍いと…正攻法は無理そうだな
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