〜その唇は嘘をつく〜
店を出て夜風の寒さに柚月が寒そうにしているから、上着を肩にかけてやる。
数日前なら、絶対拒んだだろう。
でも、嫌な顔せず……ん⁈
『どうした⁇気持ち悪いのか⁇』
掴んだシャツをぎゅっと握るから顔を覗く。
艶めく瞳を潤ませ誘って見えるのは
お酒のせいなのか⁈
それとも……
『……お前、そんな顔するなよ。さっきといい俺のこと試してるのか?』
首を傾げ何のことかわかっていない。
無自覚なのにもほどがある。
『あーーお前、マジ腹たつわ』
俺の自制心が吹き飛んだ。
柚月の唇を欲望のまま貪る。
柚月の甘い声が時折漏れ、拒まれないのをいいことに夢中になった。
辛そうに呼吸する柚月に気づき、唇を離すと
『どうして…』
と唇だけが動く。
どうして⁈
俺が聞きたい。
いくら短期決戦と決意したからといっても柚月の心が手に入るまでは手を出さないと決めていたのに…
『…甘いな……お前、男の前で酒飲むの禁止な』
柚月のあんな色っぽい顔を他の男に見せれるか…こんなに甘くて官能的なキス忘れられない。
俺を誘う艶めく濡れた柚月の唇を指で拭い、艶めきを消した。
そして…まだ自分の唇に残る熱を拭い欲望を孕んだまま無言で一緒に帰宅する。
『じゃあ、おやすみ』
今言える精一杯の一言
なのに…柚月は俺を見つめ動こうとしない。
『お前、さっきからなんなの⁇』
さっきから艶めく表情で無意識に誘ってなんなんだよ。
柚月の腕を掴み玄関に引き込み、逃げれないように壁とドアの隅に追いやり、ブラウスのボタンを第2ボタンまで外すと柚月の首にあるネックレスが目につく。
ただ……柚月に思い出してほしいんだ。
俺を好きだと言ってお嫁さんになると約束した日を…
ネックレスを指にかけ柚月にも見えるように見せた。
『これの意味がわかるか⁈』
思い出せよ。
思い出してくれ…
首を横にふる柚月に言いかけた言葉をのみ込んだ。
届かない想いに
『なんで忘れてるんだよ』
彼女の左手をとりゆびきりした小指を3本の指で撫でると
『……やぁ、ぁ…』
自分の声に驚いている柚月が可愛くて
「感じた⁈』
とからかえば、声を我慢するように唇を噛むからもっと鳴かせたくなる。
小指から薬指へ動きを変え、身をよじり逃げようとするからぐっと足の間に膝を入れた。
甘い声で
『どうして、こんなことするの?』
と聞くから
『どうしてだろうねぇ…』
と返す。