〜その唇は嘘をつく〜
思い出せないくせに、俺を誘う柚月を懲らしめてるなんて言ったらどうな顔をするかな⁈
なぁ…ゆずき
『お前にとって俺はなに⁈』
『なにって…隣の幼なじみでしょう』
『ふーん、隣の幼なじみねぇ』
お前は、この状況をわかっていない。
俺を男として意識してないなんて言わせない。
この熱い肌
甘くかすれる声
唇に反応する吐息
なぁ…本気で嫌なら逃げれよ。そしたら…逃がしてやるのに。
『……私と悠は、幼なじみだよ』
まだ、この状況でそんなこと言ってるのか⁈
思い知らせるように胸の膨らみに強く吸いつく。
『……幼なじみだけど、その前に男と女だ。俺が男だってわかれ……』
また、同じ場所に強く痕を残す。
俺が男だって思い出すまで何度だってつけてやる。
カクテルの花言葉のように『振り向いてください』なんてお願いしない。
唇の温もり、柚月の艶めいた顔、甘くかすれる声を知ってしまった。
もう…振り向くのを待っていられるか…
『…もう…待つのはやめた』
俺の戦線布告とも言える言葉をとともにキスをして外に放り投げた。
今頃、なんなの⁈
って叫んで、怒ってパニックになってるだろうな。
悩んで、考えて…
俺のことでグチャグチャになればいい。
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翌日の夜、7時少し前
つねに、仕事がらウィンドウの外を意識しているから気づいたのだが、ウィンドウの向こうに愛しい女が友達と歩いているのを見つけた。
そのまま見過ごせるわけがない。
『溝口さん、すみません。ちょっと外、出てきます』
返事も聞かず、通り過ぎようとする2人に声をかけた。
『2人でどこ行くんだ』
驚く柚月とは対照的で友達の楓ちゃんは意味深な笑みを浮かべた。
あーぁ、そう言うことか⁈
『もう…悠、仕事中でしょう。私達、これから御飯食べに行くの。早く、戻りなよ』
昨夜の晩御飯時に家にいなかった柚月…避けられたかと凹んでいたけど案外、普通に話してくる柚月にホッとする。
つい、嬉しくて
『そうか……それならこの間のお店、コンフォルトで待っててよ。あの人も連れて行くから合流しよう』
楓ちゃんには、一昨日のお礼として目配せすれば、溝口さんを見て微笑み手を振っていた。
戸惑う柚月を無視して楓ちゃんが誘いにのる。
『先に行って待ってますね。柚月、案内して…』
向きを変え、店に向かおうとする柚月を呼び止める。