〜その唇は嘘をつく〜

『確か、こっちの方…『柚月』

『今日のゆずき、かわいすぎ』

楓ちゃんに聞こえないように耳元で囁けば、顔を真っ赤にしている。

この反応…俺が男だってわかったんだよな⁈

俺を意識する柚月が可愛くて声を抑えて笑えば、照れ隠しなのか⁈

『悠の奢りだからね。楓、行くわよ』

なんて、かわいいことを言う。

あぁ…限界かも
体のラインを強調したあのワンピースを脱がせたい。

てか、あの格好でここまで来たのか⁈

あのままの姿で電車に乗せれない。

そうなると、答えはひとつ。

今日は帰さないからな…

そんな考えが表情に出ていたのか?

『お前、悪い顔しているぞ』

とニヤつく溝口さん。

『溝口さん連れて行くって約束で彼女らと今から飲みに行くんで…』

『フン…どうせ途中彼女と消えて手を振っていた彼女を俺が面倒見るんだろう⁈』

『お願いします』

悪びれもなく笑うと呆れ顔で溝口さんついてきた。

席に着くなり、テーブルの下で柚月の手を握っても逃げ出さない。

柚月から伝わってくる緊張に、俺がこれからしようとする事に緊張してくる。

『…俺はこいつ連れて帰るんで彼女お願いしますね』

抜け出すタイミング待ち柚月の言葉を聞き逃さずに強引に連れ出す。

『その手はいつから繋いでいたのかな⁈』

からかう溝口さんを軽くあしらって店を出た。

『悠…道間違えてる』

不安がる柚月の手を離さずコンクリートの建物に入り密室のエレベーターの中。

『……ここ、どこ?』

柚月を抱きしめて肩に顔を乗せ

『俺の部屋』

と答える。

…どうして…何が?…だから‥なに?…離れて…

言葉の駆け引きが続き、チンと鳴るエレベーターの音が終了を知らせる。

俺の部屋にいる柚月は、どこまでも俺を試すつもりらしい。

俺を好きじゃない…きらいっていいながら潤む瞳は、頬を染める表情は、そして…俺を試すような服。

俺を好きだって言ってるんじゃないのか


また、言葉の駆け引きが始まる。
俺も、お前も確かな言葉を待っている。

好き

ただひと言なのに…

俺は態度で示しているのに、わからないふりをする柚月。

お前の唇が…すきって動くまで誘惑は止めない。

さあ…すきって言え。

『すき、好きだよ』

俺の誘うセリフに柚月の口からずっと聞きたかった言葉…やっと聞けた。

だから
『…俺が……どんなに…お前を好きか、どんなに大切にしてきたか…教えてやる‥だから逃げるな』

俺は、やっと柚月を手に入れた。
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