〜その唇は嘘をつく〜

手に取り見てみると、今一番売れているモデルさんがキャミソール姿でベットにうつ伏せで寝ている所を上半身裸のイケメン俳優に肩にキスされながら細い首にネックレスをつけられ『永遠に離さない』と男性がつぶやくCMでつけていた物だ。

売れっ子モデルのCMということでとても話題になり、ネックレスは完売したと聞いていたのに…今、私の手の中にある。

嬉しくて、ネックレスを眺めたりつけてみたりと一人で浮かれてベットに入ってもなかなか寝つけなかった。

夜中の12時過ぎに隣に車が止まるエンジン音にカーテンの隙間から覗くと車から悠が降り、追いかけるように運転席から女の人が悠に走り寄り背を抱きしめている。
そして、体の向きを変えた悠の唇に女性はキスをして車に戻ると帰って行ってしまった。
遠目越しでもわかる綺麗な人。
胸がズキンとなり、なぜか傷ついている自分…

それは、はじめて感じる痛み。

なぜ⁇

そして、悠がせつなそうな表情でこちら側を見たような気がして慌ててカーテンを閉めた。





「ゆず‥あそこにいるかっこいい人がこっちを見てるんだけど…」

楓の声に我に返り指差す方向を見れば、それはキラースマイルで笑顔を振りまく悠だった。

茶髪で毛先にパーマがかかった前髪が耳元まであり、無造作にかき上げたようにセットされている。そして、キリッとした二重でちょっとつり目の鼻筋の通った爽やかなイケメンがそこにいる。

私も、楓のように悠を知らなければ、ときめいていただろう。

でも、あいつの本性を知っているからあの笑顔に騙されない。


「えっ…気のせいだよ」

「そんなことないよ。こっち見てるって…手、振ってみよう」

「や、やめなよ」

私の制止も間に合わずに、すかさず胸元で手を振る楓。

それに応えて手を振り返す悠。

(もう、あの男(怒)
昨日は彼女とデートだった癖に来るもの拒まずかい⁈)
心の奥で毒吐く。

楓は色白で、誰が見てもかわいいと思う。

顔がかわいいってだけじゃなく、仕草や話し方もかわいいから、たいていの男は
楓にそんな素振りを見せられたら勘違いしてしまう。

小悪魔なのだ。

計算尽くでしているから、今までは、呆れるやら尊敬するやらで楓を見てきたけど…

今回ばかりは私の中で何かが違う。

ハラハラ⁈

いや、違う。

楓にイライラしている。

数時間前に女を見た時と同じ感情がフツフツと湧いてくるのがわかった。

これって…なんなの⁈

「キャー、こっち来るよ」

頬を染め、喜ぶ楓。

私は、イライラして悠を睨んだ。

(この、女誑しめ)
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